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第6話

無事に1位をとったから 顔を洗ってから戻ろうとした タオルを持ってくるのを忘れた、とぼたぼた顔から水を垂らしながら後悔をしていた時だ 上から ぶらん、と僕のタオルがぶら下げられた 「よくやったな」 『ありがとう』 と、そのタオルを受け取って顔を拭くと 日向がいた わざわざ来てくれたんだ 「お前がやり返すとは意外だったぜ」 『だって、鼻打った』 痛かったし、と少し鼻を擦った 「まぁお前がやんなきゃ俺らがやりに行ってたけどな」 『なんで?』 「力貸してって言ったのお前だろー?」 『そうだけど、』 「だからそんぐらい当たり前だって」 と、日向が笑顔で言った うわ、日向の笑顔って まぶしい そう思った瞬間 頭がくらっとして ぼたぼた、と鼻から熱いものが流れた 「うわっ!お前!それ、鼻血!」 『え?うそ、』 と手を鼻まで持っていくと赤いものが付いて これはやばい、とタオルで押さえた 「どうした?座るか?」 『うー、すわるぅー』 最悪だ、とそのまま座り込むと 日陰行こうぜ、と日向が腕を引いてくれて 木の陰まで連れて行ってくれた 「鼻打ったからか?」 『多分。あと熱い。クラクラする』 「お前本当弱えなあー。ほら、ジャージ脱げ。熱いだろ」 『うん、ぬぐ』 と、ぬぐのを手伝ってもらって でも、あんまり薄着になりたく無いから 肩にかけて体育座りをした 「大丈夫か?保健室行くか?」 『平気、ここ涼しいからすぐ治ると思う』 涼しいからか 鼻血はすぐに止まった でも頭はクラクラしていたから 少しその場に寝ようとすると 日向が片方の膝を貸してくれたから そこに頭を置いて横向きに寝た 日向は地面に落ちたジャージを掛け直してくれて 本当にいいやつ 『ごめん、すぐ治るから』 「いいって。ゆっくりしろ。水分は取れよ」 と、日向の手が目隠しをしてくれた 目を閉じてもなんとなく眩しかった視界が 暗くなって 落ち着いてきた 涼しく感じる 寝そう 『ひなたぁ、』 「どうかしたか?」 『ひなたがいってた、きさきも平子先輩もふぶき先輩も』 「あいつらがどうかしたか?」 『みんな、いいやつだった。きさきもこの前遊んで楽しかったし、平子先輩は意地悪そうだけどいろいろ教えてくれたし、ふぶき先輩は今日見に来てくれたし』 「おお、あいつらはいいやつらだよ。仲間思いで」 まだ、俺はその仲間になりきれてる感じはしないけど 『俺、みんなのダチになりたいよ』 「…だってよー。聞いたか?」 「…恥ずかしいやつだな」 と言うきさきの声にガバリと起き上がる 『え?ちょ、え?』 「かわいい後輩ちゃんだねー」 「情けない」 続いて平子先輩にぶっきー先輩 『なんでいるんですか!』 恥ずかしい 聞かれてたのか 「これを持ってきてやったんだ」 ときさきに投げられたのはスポーツドリンク 『やった』 と受け取って飲むと 「鼻血出したの?だっさ」 と、目の前にきた平子先輩に鼻をつままれる 『 ちょ、やだ、鼻血でる 』 と顔をそむけようとすると ぴん、とおでこを弾かれた 『いった、』 「平子、もうその辺にしておけ」 『いじめられた。ひらこ先輩にいじめられた』 「だってこの女顔ムカつくんだもん。ほらもう泣きそう。女なんじゃないの?」 「ヒラコは本当に疑いぶかいよなー」 『泣きそうじゃないのに』 ぷん、とそっぽを向いた 急に動いたからか また頭がクラクラして はぁ、とため息を吐いて ひざに顔を埋めた さわ、と首筋の髪が動いた気がした 風かなって思ったけど 『ぴゃっ』 ひや、と冷たいものが首筋にくっついた 「変な声だしちゃって」 『つめた、え?ひえぴた?』 「気持ちいいだろー?」 とぐしゃぐしゃと頭を撫でられた 「平子、やめろ」 と、ふぶき先輩がひらこ先輩の手を掴んで止めた 『ふぶきせんぱい、ぐすっ』 「は?なんで泣くの?は?意味わからない 」 『みんなやさししぎてむかずぐうう、』 「ほら泣いた。女みたい」 ふぶきせんぱいは 僕の鼻血で真っ赤に染まったタオルをみてティッシュをくれた 「ほら、泣くなって。ヒラコにますますいじめられんぞー?」 『わかっでるよおおぉー』 「泣きすぎだ」 ぐい、と涙を拭いた 無理やり泣き止んで 立ち上がる 『ひらこせんぱいも!』 「なになに、大きな声だして」 『ぶっきー先輩も、』 「その呼び方はやめろ」 『きさきと日向も』 「おう」 「急に立ち上がるな。具合悪いんだろ」 『ありがとう、勝つから、きばせんも。だから、僕のこと認めてほしい』 「お前それにこだわるよな」 『僕は朱里くんじゃないから』 「わかってえよ、そんぐらい」 『絶対勝とうね!きばせん!』 騎馬戦の騎馬は日向がやってくれているから ドシドシ1年生の騎馬をぶっ飛ばして ぼくは僕で1年生のハチマキを奪っていた そのおかげか圧勝していて やったー!と騎馬から降りてハイタッチをした 「雪くんだっけー?騎馬戦で勝ったから終わりだと思ってるでしょー?」 と隣のクラスの人がなにやらニヤニヤしながらいう 『え?なに?』 「もちろん希咲もね」 「武臣!おまえまさか」 「お前ら!やれ!」 と、数名が一気に飛びかかってきて 俺の身体を押さえつける ええ?2年生なのに? 同じ2年生なのに? なんで… ◆◇ 『納得できない』 「なんで俺がこんな格好、」 『きさきかわいい』 「やめろ!って、お前」 『な、なんだよ。』 「似合うな」 やだ、帰るって言ったのに 先程、 押さえつけられたと思ったら 勝手に選抜メンバーにされ きさき含む他数名とチアガールの格好をさせられたのだ 何故かと言うと今から応援合戦があり 1年で5~10人くらい 2年も5~10人くらい それぞれメンバーを選出しかわいさを競うらしい 早くでてこーい!と 外で騒ぐ生徒 これはもう剥かれかねない、と 意を決してきさきや他のメンバーに続いて出る 「うおおおー!」 「希咲かわいいー!」 「って、雪さん美しすぎだぞ!」 「おい!うるさいぞ、騒ぐな」 まさか、女装する羽目になるなんて思わなかった それにしても男子校ってすごい 女装とわかってるのにこんなに盛り上がれるなんて 飢えてんな… 『なんで、こんな格好』 「うぉおお!応援してくれえ!」 『ひなたぁー、なにこれ、なんで僕がこんな目に』 「に、似合ってんじゃねえか」 と、目をそらしながらいう日向 いや、だって ウィッグも種類豊富だったし メイクとかも何故か道具揃ってるし なんだよ、なんでチアガールにかける心意気がここまであるのかわからないけど 『似合ってる?』 「雪さん最高っす!」 「雪さん!俺を殴ってくれ!」 『え?ひ、っ』 こわ、 飢えた獣のようにこちらに押し寄せてくる 1・2年のヤンキー達 喉が引きつった 怖い もみくちゃにされる、 1年生は自分の応援の方のチアガール見てくれって思ったけど、僕ときさき以外は ゴリラみたいなチアガールだった 僕は女顔ってバカにされるけど きさきも大概だな こっちに迫ってくるヤンキー達を見ながら どこか遠くで考える 「雪、ボケッとしてんじゃねえ!」 しかし、その声と同時に腕を引かれて 走らされる 「こっちだ!」 と、言われてようやく状況が理解できた 日向だ 日向が手を引いてくれている 手がごつごつしていて 俺のよりかなり男の手だ 「ここまできたら大丈夫だろ」 と、屋上まで来て ようやく日向が止まった 汗かいてる 暑そう 「多方はきさきが引きつけてるな」 と、屋上から下を覗きながら言う 『ひなた、』 「ん?どーした、」 と、振り向いた日向は少しフリーズして顔を赤らめた 『ちょ、なにその反応』 「いや、似合ってるから。かわいすぎんだろ…女みてえ」 『だ、男子校だから、珍しいだけだよ』 「いや、本気で似合ってる」 『やめてよ…恥ずかしい。でも、ありがとう、また助けてくれた』 本気で似合ってるって 男としてどうなんだろう、 「あ、ああ。お前あのままじゃもみくちゃにされそうだったしな」 『きさきはいいの?すごい襲われてるけど』 「あれはみんな楽しんでるからいいんだよ」 『へー、きさきかわいいなー』 その時だ 「あっれー?女子がうちの学校にいる」 と、聞こえてきた声に振り返る 『うわ、ひらこ先輩』 「なに、うわって。なんでチアガールがこんなところで日向と密会してんの?」 「俺が連れてきたんだよ」 『僕が、もみくちゃにされそうだったから』 「さっきまで鼻血だして泣いてたのに。ずいぶん可愛くなってんねー。あんた女でしょ」 と、また鼻をつまもうとしてくるひらこ先輩の手を払った 『ちがうって言ってんのに』 「こんなにかわいいのに?」 『きさきのほうがかわいいもん』 「確かにきさきもかわいいけどあんたの方が女っぽい。腕とか」 と、僕の二の腕を掴んでぷにぷにしてくる平子先輩 『僕の筋肉の少なさバカにしてるんですか』 「女の子の腕と同じ触り心地じゃん、ほら、日向も触ってみなよ」 「や、お、俺はいいって」 「これだから童貞は」 『ど、』 「な、なんだと!」 飽きちゃった、とひらこ先輩が僕の背中をドン、と押した 『え?』 「ぅお!」 背中を押されたことで 日向の胸に飛び込む 「じゃーねー。早く着替えなよ」 と、手を振って出て行くひらこ先輩 『ごめん、日向』 と、日向に支えられて 身体を起こす ちか、ひなた、近 「お、おう」 なんだよ、ヘッドロックとか平気でかけてくるくせに こんな事で赤くなるなよ ふに、と日向の手が動いた事で気付いた ひなたの手、 僕の二の腕を支えていた ふにふに、と軽く動かして 顔を赤らめた日向 『日向えっち』 「え、え!っちって、お前な!」 なんだよ、その反応 女の身体初めて触ったみたいな反応しないでほしい 『冗談だって、ほら、もう着替えてくる。恥ずかしいし』 「お、おう。さっさと着替えてくれ」 日向って女の子に慣れてないんだな、 僕が女の子の格好しただけでこれって 本物の女の子、 朱里くんとはどんな感じだったのかな

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