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第8話

大変だ、 プールが始まる こういう時に男子は不便だ ぼくは服を脱ぎたくないし そもそも泳げなくてプールが苦手だ 女子なら生理だからでどうにか乗り切れそうだけど 1回とか2回なら体調不良でどうにかなるだろうけど どうしようか、と今日から始まるプールに頭を悩ませていた いっそ理事長にプールの授業を廃止にしてもらうか、と考えた時だ 「雪ー!プール楽しみだな!きさきも合同だぜ!だれが一番長く潜れるか勝負しようぜ!」 と、ニコニコしながら楽しそうにいう日向 プールは4時間目なのに こんな朝から楽しそうにニコニコと そんな顔を見たらプールを廃止にしてくださいなんてとてもじゃないけど言えない 俺の海パンみるかー?と肩を組まれた やばい、にげなきゃ 『ごめん日向、ぼく今日プールでない』 「は?なんで!って、なんだ、このデジャブ感」 『えっと、水着忘れちゃって』 「はぁー?まじかよ!何やってんだ。取ってこいよ!4時間目だから間に合うだろ!」 と、真剣だ 彼のこのプールにかける情熱はなんなのだろうか 『えっと、いや、忘れたっていうか、買うのを忘れて、持ってない』 「何やってんだよー、残念だなー」 『ごめんごめん』 「じゃあ次の授業で勝負な!」 『うーん、考えとく』 どうにか今回は乗り切ったけど プールの授業はあと5回くらいはある さすがに買ってないで最後までとうせないだろうな どうしようかな 困る とりあえずプールの授業はジャージで見学をする事にした 「雪、体調でも悪いのか」 と、プールサイドに座ってるときさきにも聞かれて 『水着買うの、忘れた』 「持ってなかったのか」 『ね、どっかいっちゃった』 ばいばい、と日向に呼ばれるきさきに手を振って送り出すと 足をぱちゃぱちゃと水につけて遊ぶ いいなー、ぼくも プールちょっとだけなら入ってみたいな 暑いから絶対気持ちいい ヤンキーがおおいこの学校だけど プールの参加率はすごくいい方だ そんな事を考えていると びしゃ、と足元に水をかけられる 『わ、』 「雪ー、ひまそうじゃん」 『暇。うらやましい』 しゃがんで ばちゃばちゃ、と手で日向の顔に水をかけると このやろー、とすごい勢いで水を入れかけられる しばらく水を掛け合ってて気づいた やべえ、ちょう濡れてる 『日向ー、僕のジャージびちょびちょになってる』 「どんくせえなー」 『えー、日向がかけたのに。先帰って着替えてる。寒くなった』 「おう、風邪引くなよ」 『はーい』 誰もいないから教室で着替えようかと思った けど、ジャージの下のTシャツまで濡れていたから もし誰か戻ってきた時のために 制服を持ってトイレまで向かった 「あれ?またサボってんの?」 と、後ろから声をかけられて振り向く 嫌な予感しかしない 『…ひらこせんぱい』 「どこ行くの、制服持って。ってうわ、あんたずぶ濡れじゃん」 『ぷーる、日向と遊んでたら濡れたので』 「なんでジャージなの?あ、生理?」 『この前も言ったけどぼくが生理なわけないじゃないですか』 「じゃあなんでプール出てないの?あ、脱げないの?」 『水着忘れたんです』 「ふーん、じゃあ次のプールの授業は出るんだ」 『水着買ったら』 「なに?女物の水着しか持ってないの?」 『持ってないですよ、そんなの。怒りますよ、いい加減』 冷えてきた、と ぶるっとちょっと震えてくしゃみがでた 「あんた弱そうだから早く着替えなよ。タオルは?」 『ない、こんなに濡れる予定じゃなかったし』 「ばかだね。保健室に借りに行けば」 そうだな、そうしよ 保健室ならカーテンあるし そこで着替えられる 『そうですね』 と、保健室に向かうと付いてくるひらこせんぱい 『平子せんぱい、授業は』 「うちのクラス自習」 『なんで付いてくるんですか?』 「付いてこられたらまずいの?」 『べつに、』 着替えたいから 困るって言ったらこまる 保健室につくと 保健室の人みたいに タオルを出してくれた この保健室って先生いないのかな 『タオルありがとうございます』 「ほーら、ちゃんと髪も拭かないと」 と、ゴシゴシ頭を拭かれる 「頭ちっさ。女なんじゃないの?」 『もう、またそういうこという』 「だってあんたちゃんと否定しないんだもん」 『…ちがいます。女じゃないです』 ちゃんと否定 してなかったかな、してるつもりだったんだけど 「紗雪」 と、頭を拭く手が止まって ひらこせんぱいに呼ばれた 初めて、呼び捨てで呼ばれたかも 顔を上げて平子先輩の顔をじっと見る 「じゃ、ちゃんと着替えなよ」 と、すぐに保健室を出て行った先輩 着替えるまで出て行ってくれないと思っていた なのに、 なんで出て行ってくれたのかな まぁ出て行ってくれたから、と カーテンの中に入って着替えることに成功した ◆◇ 2回目のプールはまだ水着を買ってないからっでごまかして 3回目のプールは体調悪い、と言ってお休みをして 4回目のプールの日は学校を休んだ 今日は5回目のプールの日で さすがにごまかすのがつらくなってきた 「ユキー、今日もプール入らないのか?」 『…』 「雪と遊びてえんだけど」 と、日向に子犬のような目で見られて さすがに罪悪感が募る 「なぁ」 どうしよう、と黙っていると いつの間にか日向の顔が近くにあって びっくりした、と思ったら 腕が頭に回ってきて 耳元で囁かれる 日向って、距離近い 「プール入れねえ理由あんのか?」 と、いう言葉に泣きそうになった 理由はある うまくごまかせない気がする もう、隠すのも限界かもしれない 「ユキ、」 『ひ、なた…あの』 洋服脱げない理由 もう観念するしかない 『こっちきて』 と、人がいない隣の教室に連れて行く 「なんだよ、こんなところで」 『僕、実は』 と、カーディガンのボタンを開いて ワイシャツをゆっくりと上げていく そして、 「お前、それ」 お腹だけ見えるように ゆっくりとまくった 『ぼく、お腹の脇腹のところ、痣あるって見られたくなくて…あと貧弱だし泳げなくて…だからプールとか入れない』 と、お腹 わき腹にある痣を見せた こっちの痣は小さな痣で あんまり気にならないけど 本当に見られたくない胸の痣は恥ずかしくて見せられない 左の乳首の上にあるハート型の痣 昔からある痣で、小学校のころとかは気にしてなかったらけど 高学年になってクラスメイトにバカにされて以来誰にも見せたくなくなっちゃったんだ 「そういうことかよ…そんなの、気にしねえのに」 『ごめん、隠してて。でも、おれすっごいコンプレックスで、誰にも見られたくなくて、』 「驚かせんなよー、焦ったー」 『えっと、おこって、』 「怒ってねえよ!いきなり服脱ぎだすからまじびびったぜ」 『でも、ぼくうそついて』 「いや、そうだけどよ、服脱ぐからまた朱里みたいに女なんじゃねえかって」 あ、そういう疑いになるのね、服脱ぐと 『そんなわけないねえだろー、驚かせんなよ!』 「なんだよ、俺の真似みたいな言い方しやがって。ま、そういう事ならしゃーねーな」 『この事は、誰にも言わないでほしい、むかし、からかわれたことあったから』 「おう、もちろん言いふらしたりしねえぜ!でも、ユキが気にしなくなったらいいなとは俺は思うけどな。まぁ、いつか一緒にプール行こうぜ。泳げなくてもいいし、服着てていいし」 『ひ、』 「?」 『ひなた!かっこいい、すき』 「す、すきっておまえっ」 『ひなたに話してよかった!』 「おう、そうか?俺もよかったぜ」 ひなたは 今まで出会った中でいちばんいいやつ いいやつすぎてモテないんだろうな ひなたが いいやつでよかった そのうち、 本当は胸の痣の事が気になってて 嘘ついたって、言えるかな? ------------------------------- 追記 小学校高学年のころ、 左胸の乳首の上にあるハート型の痣をクラスメイトに見られ キスマークやいやらしい と、からかわれた事があります。 多感な時期だった為ものすごく気にしてしまう。 脇腹にある痣も相まって余計キスマークと言われたようです。

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