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第10話
今日は体育がないから気が楽だ
暑くなってきて
寒がりな僕でもようやく外でカーディガンを脱げる気候になってきた
しかし、
お金さえ払えば誰でも入れる学校なだけあって
冷暖房完備で
しかも体育会系男子多めのこの学校は
クーラーがキンキンで学校内は寒くて
学校内では常にカーディガンを着用していたのに
今日は間違えてベストを着てきてしまった
寒くて席で常に丸まっていた
『さむい、日向さむい』
「お前今日薄着だな?どうした?」
『カーディガン忘れた、さむい』
「俺のジャージ着るか?」
『持ってんの?貸して』
「2ヶ月くらい洗濯してねえけど。まぁ最近の体育プールだから着てねえし」
と、ロッカーからジャージを出して貸してくれる
『くさそう』
「失礼なやつだな、文句言うなら着なくていいって」
『やだ、着る』
と、制服の上からそれを羽織る
うん、あったかい
すっごい日向の匂いするけど
すんすん、と袖口の匂いを嗅いだ
「匂い嗅ぐなって」
と、袖を引張られる
『日向、テスト勉強しよ。ぼく教えてあげる』
「おお、やるか?」
『あ、そうだ』
と、立ち上がって
息を吸う
『みんなー!テスト勉強わかんない所あったらぼくか日向に聞いてね!みんなでテストがんばろ』
と
おおきな声でみんなに言った
これが僕の本来の目的だ
けど、テストやる気が無いクラスメイトたちは
みんなすごい勢いでスルーしてきた
『ふーん、まぁいいや』
と、日向と勉強を始めた
『おれちょっと飲み物買ってくる。日向なんかいる?』
「おー、コーラ買ってきて」
『おっけー』
コーラとミルクティーにしようかなあ
温かいやつぅ、と少し歌いながら
1階の自販機に向かう
温かいやつあるかなあ
この時期に
その時だ、
『あったかいやつぅ〜、んぅぐっ』
いきなり口を塞がれて
息が出来なくなった
そして、
すぐに目の前が真っ暗になる
『んー!』
なに、なに、と頭を振るけど何にも見えなくて
後ろから身体をがっちり掴まれた
『んっ!んー!』
助けてって叫びたいのに
口が塞がれて声も出ない
そのままどこかに連れてかれて
扉がしまる音
空き教室とかに入ったのかもしれない
「誰にも見られてねえな!?」
「あぁ、大丈夫だ!」
と、会話が聞こえる
バタバタと脚を動かして逃れようとするけど
腕をつかまれて床に押さえつけられる
なに、
なんなの?
ぼく、どうなっちゃうの?
バタバタと動く脚だけで抵抗するけど
力が強くてどうにもならなくて
机か何かに縛り付けられてしまう
『んんん!』
「うっせえ!黙らねえと殴るぞ!」
と、知らない声が言ってくる
知らない人だ、知らない声
多分相手は2人くらいいる
怒鳴られて
怖い、と声を出すのをやめてしまった
「目隠し取らねえ?せっかく女顔なのに見えねえじゃん」
「バカ、そんな事したら顔見られんだろ!」
「いや、そうだけど…せっかくの女顔が…」
「まぁこれもコレでどえろいだろ」
「たしかに。脚M字にひらこうぜ」
と、抵抗しても脚を無理やり開かれて
それもどこかに縛り付けられてしまう
そして
カシャカシャ、と写真を撮られる音
「騒ぐなよ。騒いだらこの写真、晒す」
と、警告された後
口を塞がれていた布を外されて
ぷは、とようやく息がしやすくなる
『誰だ、お前たち』
「ほらほら、喋るなよ?雪ちゃんよぉ」
と、僕の名前を知っていた
だれだ、知り合いなのか?
「女なんだろ、こいつ」
「ぬがしてやろうぜ、服」
『やだ、やめろ、』
「ほら、騒ぐなって言ってんだろ?わかんねえのか?」
ピタピタ、とほっぺたを冷たい物を当てられる
なんだ?凶器的な物でも持ってるのか?
「で、結局お前女なんだろ?」
『男だ、』
「ぬがしてみればわかるって」
と、服をベルトに手をかけられた
「いや、ちょっと待て、こいつ男だったらどうすんだ?」
「いや、無いだろ」
『いや、男だって』
なんだ、こいつら
「いや、仮に男だったらどうするよ。せっかくここまで連れてきたのに犯せねえだろ」
「じゃあどうすんだよ、とりあえず脱がして男か女か確認しようぜ」
「ちょ、待てって」
と、何故か揉め始めた2人
いや、男だって
「わかった、口があるからな、こいつ」
『?』
「だから、なんだってんだよ」
「とりあえず脱がして確認する前に女か男はファンタジーのまま口に突っ込もうぜ」
「あー、頭いいな、お前」
『いやいやいやいや』
かちゃかちゃ、と目の前で
いや、見えないけど
ベルトを外す音がする
「どっちからいく?」
「いや、雪ちゃんのお口処女は譲れねえだろ」
「そうだな、ジャンケンで決めるか」
と、ジャンケンを初め出した
こいつら、馬鹿なんじゃないのかな
なんだよお口処女って
気持ち悪いんだけど
そう思ったらもうなんか怖くなくて
ジャンケンであいこを繰り返している
2人を横目に
すぅ、と大きく息を吸った
『たすけてえええ!ひなたあ!きさきい!ぶっきーせんぱあい!ひらこせんぱぁい!だれでもいいからたすけてええええ!』
と、おおきな声を出した
「ばっ!」
「何騒いでやがる!」
と、いそいで口を塞がれて
『たふへへええ!』
と、口を塞がれる直前も抵抗して叫ぶけど
呆気なく再び口を塞がれてしまう
「くそ!舐めやがって!」
「騒ぐなって言ったよな!」
「ちょっと痛い目合わないとわからないようだな」
と、パキパキと指を鳴らす音が目の前でする
「顔はやめろよ、萎えるから」
「分かってるって」
と、顔以外に来るであろう痛みに備えて
ぎゅ、と身体を固くする
その時だ
ドッカン、バッキン!という大きな音がした
そして足音
『んん!』
誰かが、来た?
助かった、と少しだけど体から力を抜いた
しかし、
「て、てめえは!」
「ま、待て。話を聞け!」
「そうだ、1番突っ込んでいいぞ!お前が。そうだ、こいつの処女、お前にやるからよ!」
「そうだ!そうしよう。ほら、今から脱がすらからな」
と、再び僕のベルトに手がかけられて
ビクッと体が震えてしまう
どうしよう、
声も聞こえないからだれかも分からないし
僕が知ってる人かも分からない
今度こそ、絶体絶命だと思った
しかし、
目隠しの向こう側から聴こえる
バキッボキッドカッという音
そして、
こちらに向かってくる足尾と
『……』
どうしよう、
伸びてくる手の気配が怖くて
ビクッとしてしまう
しかし、その手はぼくの目隠しを外した
『……んんんんんんむ』
と、口を塞がれたまま
僕を助けてくれた人の名前をよぶ
安心して、身体中の力が抜けた
ぷはっと、口を塞いでた布を外され
口を開けたまま、息を吸って
名前を呼んだ
『ぶっきーせんぱあい、』
「へんな名前で呼ぶな」
と、縛られている腕やら脚やらの拘束も解きにかかる
「涎垂れてるぞ」
『だって』
口になんか布みたいなの突っ込まれてたから
手が縛られてるから拭えなくて
そのままだらし無く涎を垂らしっぱなしにしていたらぶっきー先輩がハンカチを出して拭いてくれた
『…ありがとう』
解けない、と文句を言いながら吹雪先輩は
紐を解いてくれる
「こいつらは知り合いか?」
と、床に伸びている
2人組を視線で指す
『えっと、知らない』
「そうか」
ようやく腕の拘束がはずれたから
一緒に脚の拘束を解いていく
『先輩どうして、ここが』
「日向がお前の事を探していたからな」
『先輩も、一緒に探してくれたの?』
「お前の声が聴こえたからな」
『そうだったんだ、先輩!ありがとう、助かった』
「あぁ。何があった?大丈夫か?」
『えっと、…歩いてたら急に後ろから目とか口とか塞がれて、ここ連れ込まれて』
「何をされたんだ?」
『えっと、何にもされなかった。先輩が助けてくれたから』
「そうか、とりあえずこいつらの事は教員に報告するべきだろうな」
と、脚の拘束もほどけて
先輩が教室から出ていこうとするから
ぼくもいく、と
立ち上がろうとするが
『まってぇ、せんぱい』
「なんだ、」
『腰、抜けちゃって…たたせて』
大丈夫だと思ってたのに
なんだか情けない
女でもないのに…
「保健室行くか?」
『へ、平気だけど…ちょっと』
と、いうと
ぼくの腕を引いて立たせてくれて
案外怖かったようで
ガクガクと情けなく力が入らない
脚を見かねて
『ひゃっ』
お姫様抱っこをされてしまう
『せ、せんぱい!?ぼく、歩けるよ』
「日向の所に行くまでだ」
と、ぼくを抱っこしたまま
教室から出ていくから
恥ずかしい、と顔を覆い隠した
すると
辺りからザワザワと声が聞こえて
見られたくなくて
恥ずかしくて
ぶっきー先輩の首に手を回して顔を隠した
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