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第19話
夏休み入った
夏休みは色々学校のことでやる事があった
まあ毎日ケンカがある学校違って気を張らなきゃ行けないわけじゃないから楽っちゃ楽なんだけど
そんな僕の今日の日程は
学校のみんなの家の見回りに行くことになっていた
学校を制覇するって何も暴力だけじゃない
僕は学校を公正させに来たから
手始めに1つしか出ていない宿題を
みんながやるように家庭訪問をするのだ
『あの、日向くんと同じクラスの藤と申します』
と、日向のお家のピンポンを押したら
お母さんが出たから挨拶をする
「日向ね、ちょっと待ってね」
と、言われて待ってると
「どうした、急に」
ガチャりと玄関のドアが空いて日向が出てきた
『夏休みの見回り。暑いね』
「見回り?とりあえず上がっていくか?」
『いいの?お邪魔しマース』
靴を脱いで上がると
人の家の匂いがした
「俺の部屋階段上がって正面。先行ってろ」
『はーい』
お母さん優しそうだし
家庭環境良さそう
まぁ日向いいやつだしな
親もいい人だろうな
勝手に床に座って帽子をとる
エアコンがきいていてすずしい
『ふいぃ、』
「こんなんしかねえけど」
と、むぎ茶とお菓子を出してくれた
夏はやっぱりむぎ茶だよね
そういえば、友達の部屋って初めて入ったな
お母さんがちゃんとした人だからか
部屋も綺麗に片付いていて
どこまでもヤンキーらしくない奴だった
『日向今何してたの?じゃま?急に来てごめんね』
「いや、今宿題やってたから邪魔って程じゃねえけど」
『ひ、日向…!』
「な、なんだよ」
『日向は本当にいいやつだな、偉いよ、初っ端から宿題やるなんて』
「いや、当たり前だろ。後半遊びてえし」
『そうだよな、いいやつだな、日向は』
だってここの学校の人とかは基本的に
後半も前半も遊びてえから宿題やらないやつばっかりでしょ?
「そういうお前は?終わったか?」
『まぁ今日までのノルマは終わってる』
「お前もちゃんとやってんだな」
『まぁ、終わってなきゃ見回りとかしてる場合じゃないからね』
ひとのこと言えなくなるし
「じゃあさ、宿題終わったら」
『ん?』
「約束して海行こうぜ!去年は朱里の別荘みんなで行ったんだぜ!」
『ふーん、朱里くんの』
あ、と
言ったあとに気付いたのか
表情を曇らせる日向
傷つくなら言わなければいいのに
『あー、じゃあ今度は別荘じゃないけど、みんなで僕の別邸いこ』
「べ、別邸」
『いや、別邸って言っても普通の田舎にある一軒家だよ。普通の家』
僕とままが住んでた家だよ、普通の
本妻じゃないままと僕はお父さんと同じ家に住めなかったから
「別邸ってなんだ?」
『んー、僕の実家みたいな、昔住んでたけどこっち引っ越して来たから今は住んでないだけ』
「売らねえんだ」
『まぁ田舎だから誰も買わないもん』
「ふーん、でも楽しそうじゃん、行こうぜ!」
『いこいこ!その為にも宿題早く終わらそ』
「だな。問題はキサキとヒラコか」
『きさきなんで?宿題やらない子?』
「あいつ去年も色々残してたからなー」
『まじか、じゃあちょっと今からきさきの家見回りしてくる』
「ってお前分かんのかよ場所」
『わかるよ、みんなの』
「なんでだよ」
見回りように理事長に聞いたから
「そういやお前俺んちも教えてねえよな。なんで知ってんだ?」
『まぁいいじゃない、じゃあきさきの所行くかな』
「ちょっと待て」
『んー?』
「俺も行くから。キリのいいところまで宿題やっちまうからちょっと待っててくれよ」
『おお、じゃあ待ってる。ポッキー頂くね』
「おう、急いでやるわ」
と、椅子に座って机に向き直ると日向を横目に
麦茶をもう1口のんで
ポッキーを咥えた
日向のお部屋面白いな
日向の好きなもので構成されてるんだと思うと興味が湧いた
日向が好きそうな色のカバーがかかったベッドに
身体を鍛える本
テレビとゲームもある
あとは、とちょっと飽きてきて
日向の普段見ている景色を見たくてベッドに座った
「あんま見るなよ?」
『何が?』
「部屋。恥ずかしいだろ」
『そう?キレイじゃん』
ごろ、とベッドに横になってみると
日向の匂いがして
ベッドのふかふか具合も手伝って眠くなってきた
日向はやく宿題終わらないかな
「おい、眠いのか?」
と、日向が覗き込んできたから
起き上がる
『眠くなってきた』
「男の部屋でそう簡単に寝るなよ」
『女の子にいうみたいな言い方しないでよ』
「いや、そんなつもりじゃ、」
そんなつもりじゃないか
多分朱里くんと僕を重ねているんだ
『そういえば、きさきにバレたんだった』
「何のことだ?」
『痣、体育やってる時に隙間から見えたんだって』
「まじかよ。気付いたの俺だけだと思っていたが」
『ね、バレちゃった』
別にいいけど、お腹のところだし
アザになってるけど大丈夫か?と心配してくれたけど元からって言ったら
そっか、で終わった
「まぁあいつはいいやつだから大丈夫だろ」
『うん、日向ときさきにはあんまり秘密とか作りたくないから』
大きな秘密は
あと2つくらいあるけど
秘密とかあんまり作りたくないのは本当だった
だって、ふたりともいいやつだし
暇だ、と起き上がって
日向の宿題を上からのぞきこむ
『あ、そこ間違ってるよ』
「え?どこだ?」
『そこ、』
と、上から指を指すと
「ちっけえよ!」
と、振り向いた日向に怒られる
『えええ、急におこる?』
「い、いや、わるい。ちけえんだもん。急に」
『ごめんごめん。そこ、間違ってるって。多分計算間違え』
「どこだ?」
『そこ、』
と、日向の隣に膝を付いて立って
間違えている所を指さし日向をのぞきこむ
「……なぁ」
『なに、』
「俺さぁ、お前が男だって、理屈では分かってんだけどな」
『なに急に』
「いや、聞けって」
と、いう日向の顔は真剣で
何、と黙って日向の話の続きを聞く
『うん、』
「お前の顔か、わかんねえけど。ドキドキする事あるから…あんま近寄りすぎんな」
『えええ、そんなのある?』
「…俺だって、わかんねえんだよ」
『ねえ、それは…僕のこと好きになっちゃうかもってこと?』
「……いや、それは」
『だったらさ、勘違いだと思うから気にしないで?』
日向は、僕の中に朱里くんを見ているだけだ
きっと
「勘違いって、」
『僕ちょっと距離感下手くその事あるけど…そのうち慣れるんじゃない?』
だから、そのうちきっと気にならなくなるんじゃないのかな?
それでもへんな気分になるようだったら
『日向、こんど朱里くんに会いに行こ』
「は、なんで、」
『すっきりするんじゃない?』
「やだよ。もう会わないって決めたんだ。あいつはもう女に戻って、普通の生活してんだから」
あぁ、失敗した
これはちょっとまだ早かったな
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