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第27話
『せんぱい、起きてたの?』
「ようやく寝れたのにお前がうるさいから起きた」
『……ごめん、』
と、先輩の寝るベッドの隣に布団を敷き直して
ぼくは布団に入った
「枕変わると寝れないんだよね」
『意外にデリケート』
「バカにしてんの?」
『いや、先輩、保健室でよく寝てるから…どこでも寝れるのかなって』
「まぁ、昼寝程度なら寝れるけどさ」
『その違いがよくわかんない』
寝よ、と快適な温度のお部屋で僕は肩まで布団を上げた
なんか、変な感じだな
実はこのお部屋、僕がむかし使っていたお部屋だ
それで、僕のベッドに先輩が寝てるのがなんだか不思議だった
先輩は相変わらず寝れないのか、
もぞもぞと寝返りを繰り返す
「ねえ」
『…なんですか?』
「あんたのせいで目覚めた。」
『……知らないです』
「ちょっと外行こうよ」
『……外ですか?』
「うん」
と、先輩について
とりあえず先輩が貸してくれたパーカーを羽織って
みんなが起きないように静かに玄関から外に出た
『んんん、風が気持ちいいですね』
まだ玄関を出ただけなのに
なんだかスッキリする
「夜は結構涼しいんだね」
『そうですね、きもちいい、』
と、伸びをすると
チラッと目の端に車が映る
そう言えば先輩って、運転できるんだけっけ
「ドライブでもする?」
『…ドライブ?』
「車、乗りたそうにしてたから」
『……乗りたい、』
「じゃあ行こうか」
と、先輩はすぐに鍵を取ってきてくれて
2人で車に乗り込む
うわあ、先輩の助手席、座っちゃった
「どこ行きたい?」
『えっと、海?』
「あー、明日行くとこ?」
『うん』
「道案内してね」
『うん、』
と、エンジンをかけて
ゆっくりと車が発進する
あれ、なんか、
ちょっとわくわくする、
夜のドライブ
田舎だから結構暗くて
車のライトに道が照らされるけど
僕達以外の車なんて走ってなかったから
『そこ右行ってまっすぐです』
「りょうかーい」
先輩、意外に運転上手い
助手席、めっちゃ快適じゃん
「あ、あんた車酔いするんだっけ?」
『別にしないよ』
「今日ここ来る時はしてたじゃん」
『あー、あれは、なんか、精神的なものというか』
「そう、ならいいけど」
『心配してくれたんですか?』
「そりゃ隣で吐かれたら困るなって」
『先輩の前でそんな情けないところ見せたくない』
「ふーん。そんなの今更な気もするけど」
『なんで?』
「あんた情けなくすぐ泣くし、情けなくすぐ勃たせる子供みたいなちんこだし」
『んんん、そ、そんな、事言わないでください、』
「で。もういいの?その精神的なものは」
『えっと……うん』
「機嫌悪いの治ったってこと?」
『機嫌、?』
「あんた今日1日機嫌悪いじゃん。ツンケンして」
『そんな事……ないですけど、』
「うそつけ」
『先輩だって、』
「俺が何?」
『……女顔だったら誰だっていいくせに』
「は?」
『「潤ちゃん」って、きさきばっかりかまってるじゃん』
「あー。あいつかわいいよね。おまえと違うベクトルで頭悪くて」
『………』
ほら、やっぱりかわいいんじゃん、きさき
知ってるし
きさきかわいいのだって
きさきバカだけどなんていうか愛嬌あるんだよなあ
「潤ちゃんに妹いんの、あんた知ってる?」
『あー、うん。さわちゃん』
「顔そっくりなんだよね。本当に潤ちゃん女バージョンって感じ」
『………ふーん、』
「でもさー、中身も潤ちゃんすぎて。イマイチムラっとこないっていうか」
『……は?』
ムラっとって、
「潤ちゃんと同じベクトルで頭悪いんだよね、あの子」
そうなんだ、
さわちゃん普通にいい子そうだと思ったけどな
確かにきょとんとしてる感じでかわいかったけど
「で、あんたヤキモチ妬いてたの」
『……ヤキモチ、』
「潤ちゃんにヤキモチ妬いてたんでしょ?俺が潤ちゃんに構うから」
『………だって、』
「そのくせあんただって日向とベタベタして襲われかけてたじゃん」
『お、襲わ、!?ん、な、わけ、ないじゃん!』
「俺にヤキモチ妬かせたくてわざとやってたんじゃないの?」
『え?え?』
「……あんた本当に頭悪いよね」
え、僕、
そんな頭悪いのかな、
「お、あれ海?」
と、窓の外にキラキラ光る水面が見えてくる
『うわあ、海だ』
「へえ、案外キレイじゃん」
と、海のそばに車を停めて降りてみると
誰もいない海は静かで
月の灯りが反射して
キラキラしてた
しかも風が涼しくて気持ちいい
「紗雪、ちょっと近く行こ」
砂で歩きにくいよ、と階段を降りる時に先輩が手を差し伸べてくれた
『うっわあ』
「え、何、その反応」
『なんか……デートみたいできんちょうする』
「は?あんた相変わらずバカじゃないの」
そりゃそうだ、
だって、先輩があまりにもかっこいいから。
『……ごめんなさい、』
と、先輩は手を繋いで
水が来るギリギリまで連れていってくれる
『ちょっと足入りたい』
「入れば」
そう言われて、
サンダルを脱いで
ぴちゃ、と足を付けて見る
『つめた、』
「へえ、冷たいんだ」
『先輩も』
「やだよ、濡れたくないし」
『なんでよ、せっかく海来たのに』
「明日入るじゃん」
『……そうだけど、』
先輩は波打ち際ギリギリまで来て
少しだけ水に手をつける
暗い海で
ぴちゃ、と水に手をつける先輩は
やっぱりモデルなだけあってかっこよくて、思わ見とれてしまう
「紗雪、転んだりしないでよ」
『大丈夫、気をつける』
ぴちゃぴちゃ、と先輩の隣まで歩いていくと
先輩はぴしゃっと僕の足に水をかけた
「楽しい?」
『うん、楽しい』
「そっか。紗雪って単純だよね」
『別に単純でいいし。平子先輩とドライブして、夜の海きて、デートみたいで楽しいって僕は思っただけだし』
「だから、バカじゃないの。デートみたいじゃないって」
『……いいじゃん、そう思ったんだから』
「デートみたい じゃなくて、正真正銘、デートだから。紗雪は本当にバカだね」
と、先輩が笑って
波がざば、っと僕の足元にかかった、
『うっわあ』
なにそれ、ずる、
そんなん言われたら
僕、先輩の事好きになるじゃん
『……先輩、いじわる』
僕のこと好きになってくれないくせに
なんでそんなどんどん好きにさせるようなことばっかりするの
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