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第3話 初めてのお仕事?・2
「はい、お待たせ! 俺特製のサンドイッチ、好きなだけ食べてね!」
大皿の上に山盛りのサンドイッチを乗せて、炎珠さんがキッチンから出てきた。昨夜はピザで今朝はサンドイッチ。嫌いじゃないが、炭水化物ばかりだ。
「トマトと玉子、それからツナとピクルス入り。ハムとマヨネーズ。ピーナツバターに、イチゴジャム。好きなのを食べてよ、那由太。牛乳もあるからね」
新聞の上に置かれた大皿を見た瞬間、腹の虫が騒ぎ始めた。炭水化物だろうと何だろうと、朝食は一日の大事なエネルギー源だ。
「美味そう……いただきます!」
「炎珠。俺のトマトジュース取ってくれ」
「はいよ、ドラキュラ男子」
それぞれテーブルを囲み三人掛け用の広いソファに腰かけ、第一日目の朝食が始まった。朝のニュース番組では天気予報が流れていて、今日は最高気温が29度になると告げている。
リビングはエアコンで丁度良い温度に冷やされている。実家にいた時は「六月にエアコンなんてまだ早いわ」と、母さんがリモコンを隠していたっけ。
「外行くの、もう暑いよね。夏の間はずっと南国リゾートで優雅に過ごしたいなあ」
「俺は嫌だね。南国は冬に行くモンだろ」
「……お二人は、仕事はしてないんですか?」
サンドイッチを手にぼんやり問うと、炎珠さんがマヨネーズの付いた指を舐めてからそれに答えた。
「こう見えてフリーで色々やってるよ。刹はフォトグラファーだしモデルもやってたし、俺は一応デザイナーだしイラスト描いたりもしてたし。まあ元々お金には困ってないから、殆ど遊んで暮らしてるけどね」
人間の男をペットとして囲うのも金持ちの道楽ということか。確かにぶっとんだ思考と金が無ければ、こんな計画を実行しようなんて思わないだろう。
何しろ渋々ながらも俺が了承した以上、彼らのやっていることは犯罪じゃないのだ。
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