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第8話 炎珠ご主人の謎の性癖・4

「炎珠さん……入ってもいいですか?」  ドアをノックすると、「うん」という若干元気のない声が返ってきた。 「へへ、……ちょっと恥ずかしいですけど、ワンピース着てみました。似合ってます?」 「那由太……」  驚いた炎珠さんが目を丸くさせて俺を見る。ベッドに伏せていたらしく、前髪に癖が付いていた。 「可愛いですか?」 「……うん、すっごく可愛いよ。那由太、世界で一番可愛い」  世界で一番。……それって多分、炎珠さんにとって最高の愛の言葉だ。  俺はスカートの裾をふわふわと翻らせながらベッドに近付き、炎珠さんの顔を上からじっと覗き込んでから笑った。 「家の中でだけなら、こういう格好も悪くないかもしれません」 「……本当……?」 「俺が恥ずかしがっているところは、二人以外には見られたくないですから」 「……那由太っ」  眉尻を下げて俺に抱き付いてきた炎珠さんの頭を撫で、俺も一緒になってベッドに転がった。 「炎珠さん、可愛いですよ」 「あ……」 「すっごく可愛い。炎珠さん、世界一可愛いです」  潤んだ炎珠さんの瞳は可愛いというよりも綺麗で、吸い込まれそうで。  俺はニッと笑ってみせてから、更に炎珠さんの頭を撫でた。 「……ありがとう、那由太」  顔を上げた炎珠さんと唇を合わせ、お互いにぎゅっと抱きしめ合う。刹が言っていた「ゆっくりしてこい」もまた、フラグだったみたいだ。 「は、……ぁ」  絡む舌に弾む息。見つめ合う視線と触れ合う指先。この格好でこういうことをするのは少し恥ずかしいけれど、大好きなご主人が喜んでくれるならそれで良い。 「スカートだから、太腿が冷たくなってるね」 「ん、……慣れないですこの感じ、脚がすーすーして……」  短いスカートの中に割って入ってきた炎珠さんの手が、温めるように俺の太腿を優しく撫でる。 「下着はいつものボクサーだね。次は下着も可愛いの買ってくるよ」 「そ、それは……せめて通販の方が良いかもしれません」  ワンピースはそのままで下着だけ下ろされ、ますます中がすーすーしてしまう。恥ずかしさよりもドキドキが勝ってしまうのは、俺も少しずつ触れられることに慣れてきている証拠だ。 「女の子扱いしたり、女装させるのが好きな訳じゃないんだよ」 「女の子向けの物の方が、可愛いのが多いってだけですよね?」  そもそも可愛い物が女の子にしか許されないという決まりはない。男性がスカートを穿く国だってあるし。  分かっちゃいるけれど、長年刷り込まれてきた考え方というのはやっぱり簡単には変えられないもので。このことに限らず、一般常識から外れた個性や思考を持つ人が異端とみなされてしまう風潮は、いつか良い方向へと変わって行けば良いなと思う。 「捲ると中が見えるっていう、単純だけど奥深いスカートの構造が好きなんだよね。雑誌の袋とじ的なやつ」 「……え、ええ……? そんな理由もあったんですか?」 「那由太、そこに仰向けで寝ててね」  言われた通りベッドに仰向けになると、炎珠さんが俺の両膝を押し広げて大きく股を開かせた。 「えっ、……!」  そうして、スカートの中へと思い切り頭を突っ込まれる。 「え、炎珠さんっ……。これはちょっと駄目です、凄く変態チックですっ……!」 「何か思春期の頃にこういう妄想してたの思い出すなぁ。周りは刹も含めてスカート穿いてくれる男子がいなかったから、実行できなかったけど」  長年の夢なら実行してくれても良いよ……とは思うけれど、……。  ──や、やっぱり恥ずかしい!

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