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第7話
こんなバイト選ばない……か。
自嘲の笑みを漏らしながら、バシン、とエンターキーを叩く。自分だってこんな仕事を選ぶつもりなんてなかった。というか、こんな生き方を選ぶつもりなんてなかった。選んだことなんて何ひとつない。選ばれたことも。
月末で業務量が多かったが、それでも年末ほどではない。来月末を想像し、ぞっとしたところで、昼休憩を終えた社員たちが戻ってきた。
「朱莉ちゃん、お昼行ったー? えっ、まだ? 行って行ってー、あ、電話取ってくれたの? ありがとー」
と、女性社員がすぐさま受話器を上げようとしたので、
「折り返しは二時以降がいいそうです」と立ち上がって声をかける。それも含めてちゃんとメモしたのに、まったく見ていない。
腹なんてちっとも減っていない。昼を取りに行くくらいなら残っている仕事を片付けたいし、行くとしてもこの時間帯はまだどこも混んでいる。なのに『休憩しろ攻撃』が鬱陶しく、結局外へ出て時間を潰すことになる。せっかくの気遣いを無にするわけにはいかない。気遣いに対する気遣いも必要だと学んだ。
エレベーターを待っていると、運悪く男性課長につかまってしまった。
「あ、今から昼? 外?」
「はい……」
じゃあ一緒に……とだけは言ってくれるなよ、と念をこめる。悪い奴ではないが、「サクッと食べられるところ」が口癖の彼が行きつけにしているところはラーメン屋かうどん屋しかなく、あいにく炭水化物を腹に入れるゆとりはない。
「いつもどこで食べてんの」
「あー……コンビニで適当に買ってきて、空きスペースで食べることが多いです」
毎日外食できるほどカネないんで……と言いかけ、「外出るの時間かかりますしね」と言い直す。
「朱莉ちゃん、来年もいてくれるよね?」
「へっ……え、ああ……」
エレベーターのドアがあいた瞬間にそんなことを言わないでほしい。出遅れてしまい、エレベーターの中にいたひとから、「早く乗らないのか」と冷たい視線を寄越されてしまった。それにも関わらず彼は重役みたいな態度でエレベーターに乗り込むと、人目も憚らずデリケートな話を続けた。
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