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第13話

「探して……んじゃなく、断ってたんだよ、勘違いアルファを。てめえみたいな。ったくアルファってやつはどうして……んっ」  尻を揉んでいたのと反対の手が、前に伸びてくる。反射的にその刺激を避けるために腰を引いただけなのに、やっぱり欲しいんだな、と、ぐりぐりと穴を探るようにされた。周囲に気づかれている様子はない。いや、気づいていて皆、知らないフリをしているだけかもしれない。朱莉だってたぶん、そうしていた。何ならこんなとこでサカってんじゃねーよ、と、敵意をオメガに向けていたかもしれない。  発情中のオメガにわいせつ罪や強姦罪は成立しない。自衛しなかったオメガが悪いことになる。むしろ気持ちいい思いをさせてもらって、発情を鎮めてもらって、アルファに感謝すべきと思われてすらいる。発情期以外では通用しないはずなのに、しかし何故かアルファが訴えられたケースはほとんど聞かない。発情期だろうとそうでなかろうと、オメガは『そういう』イキモノだと、本音では皆、そう思っているからだ。 「や、めろっ……やめ……」  隙間から手を入れられ、直にふれられる。気持ち悪さはさっきまでの比じゃなかった。尻の肉をかき分けてくる指。先端が入口にふれた瞬間は、息が止まりそうだった。 「だか、らっ……は、つじょうき、じゃない……って……」 「腰こんなに揺らしてるくせに?」  シャツが、ズボンが、ぐしゃぐしゃによれる。男の手汗でべたべたにされる。さっきまではきれいだったのに……こんなことであっさり、ぐしゃぐしゃにされる。こんなことでしか……  こんなタイミングにまた電車はトンネルに入る。ドアに縋りつく情けない姿が鮮明に映し出されてしまう。嫌だ。畜生。嫌だ、嫌だ、嫌だ……! 抵抗してやる。何が何でも。許すもんか。許すもんか……!  拳をぎゅっと握りしめ……しかしふっと彼の手が離れ、肩すかしを食らう。諦め、た、のか……? 何にせよ最悪の事態は回避することができたのか?  けれどほっと力を抜いた瞬間、彼は吐き捨てた。 「何だ、全然濡れてないじゃん。つまんねーの」

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