15 / 150

第15話

「……ったく、しつこいな。お前本当にオメガか?」 「オメガだよ。オメガだったら悪ぃかよ。はっ、オメガだったら手も足も出せずに泣き寝入りするだろうって思ってたか? ざっけんな! これだからアルファは……」 「じゃあ証拠は?」 「はあ? ふっざけ……」 「俺が君をさわった、っていう証拠はどこにあるの。証拠がない限り、ただの言いがかりだ。それ以上大声で喚くようなら逆に名誉毀損で訴えるよ。それに君、今、発情期じゃないんだろ? フェロモン出してないオメガにサカるアルファなんてどこにいるの。さあ、証拠は? 早く出して。こっちは時間がないんだから。会食の時間に遅れてもし先方が機嫌を損ねてしまったらそれこそ君、どうやって責任取るつもり?」 「な、にを……適当なことばっか、べらべらと……」 「出せないみたいだね。ああ、被害者意識ばかり強くて嫌になる。オメガと関わると本当、ロクなことがないな。これだからオメガは……」  返す言葉につまっているうちに、彼はロータリーの方へ向かってしまう。かろうじて絞り出した「待て」は、彼の耳に……誰の耳にも届いていないことが分かった。石膏で固められてしまったみたいに、一歩踏み出すのに力がいった。 「待て」  何とか声を出せた。 「待て……待て! 待てよコラ! 待て卑怯者! このクソアルファ!」  ちらちらと、視線を集めてしまっているのが分かる。でももうどうでもよかった。いっそもっと目立ってやれと、人混みを強引にかき分け、大股で闊歩する。 「アルファだからって何やっても許されると思ってんじゃねーぞ! てめえのツラ覚えたからな、絶対許さねえ! 許さ……」  その瞬間、いきなり横からぶつかられた。避けきることができず、尻餅をついてしまう。 「ってえ……」

ともだちにシェアしよう!