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第23話
「ふーん、それってしゅうぎいん? さんぎいん?」
違いも分からなかったけど、なけなしの知識を引っ張り出したところ、
「市議会なんで……国政じゃないんで」
墓穴を掘った。
「しぎかい……ああ分かった、それで選ばれたら今度は市長になるんだろ?」
「えっと……」
何だかとっても気を遣わせたのが分かったので、話を一旦横に置いて、まだ手つかずのチラシの束を引き寄せる。すると彼も、朱莉の隣のパイプ椅子を引いて腰掛けると、チラシを手に取った。忙しそうなのにいいんだろうか。
「……これ、全部で何枚あんの」
「これで……一万、くらいでしょうか」
「一万……」
「でもまた第二弾、第三弾と来ますから……最終的に十万くらいにはなるでしょうか」
「じゅうまん……すげーな。それ全部配んの?」
「ええ、街頭演説の際に配ったり、各戸にポスティングしたり……これでもすぐ、足らなくなるんですよ」
「それってこのあたりの家に全部、配るもん?」
「ええ。有権者がいるところには」
「ふーん、でも俺、一回も記憶にないわ」
思わずつるりと本音が漏れてしまった。やばい、と思ったが、しかし彼は穏やかな笑みを崩さない。
「あー……あ、でも、きっとそれは俺が馬鹿なだけだと思う」
「……いえ、いつも思ってるんですよ。こんなの所詮自己満足なだけなんじゃないか、って。私も……この仕事をしているから興味を持って見るだけで、興味ないチラシが入っていても、ロクに見もせずに捨ててしまいますから。たくさん入れられていると捨てるのだって面倒で……。でも長年の慣習だからやめられないんですよ。チラッとでも名前が目につけば、それで何となく引っかかって、投票用紙に書いていただけるかもしれませんから」
ぎくりとした。
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