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第34話
オメガだからって初めから諦めることはない、と勇気づけてくれたのは母だった。
大学も行かせてもらえたし(名前さえ書けば受かるようなオメガの特別枠だったけど)、ひとり暮らしもさせてもらえた。資格試験や短期留学(ほとんど旅行だったけど)、アルファが多いサークルに入ること……母は何ひとつとして「オメガだから」と反対したことはなかった。最後には必ず、やりたいことをやったらいい、と背中を押してくれた。
でも今となっては分かる。
あれは母が、自分自身に言い聞かせていたに過ぎなかった。
この子は何だってできる。何にだってなれる。オメガであることを恥じることなんてない。オメガをうんだことを負い目に感じることも……
大学で朱莉はひとり暮らしをしていたが、寮に入っている友だちも多く、一度招いたのをきっかけに朱莉のアパートは溜まり場のようになっていった。
こんなことをするために親はひとり暮らしを許したわけじゃない。良心は痛んだ。でも、一度そういう環境に慣れると、誰もいない日が耐えられなくなっていった。地元にいた頃はアルファなんて数えるほどしか知らなかった。高嶺の花で、そういう関係になることはおろか、話すことすら夢のまた夢だった。でも都会に出て来たら、簡単に関係を結ぶことができた。よくも悪くも簡単に得られたし、求められた。それで勘違いをしてしまった。輪姦されて、子どもができた。誰の子か分からない子どもなんてうめるわけがなかった。
うみたい、と切望した子でうら、うむことができなかったのに。
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