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第46話
体調。
どうしてそんな上品な言葉を選べるんだろう。
後ろのひとたちは朱莉をオメガだと気づいただろうか。朱莉と鷺宮の関係をどのように想像しているだろう。まさかつがい候補……と思われてたりするのだろうか。いやそれはないか。初めに間違えたままの距離感でずっと来てしまったけれど、そもそも鷺宮とは住む世界が違う。ズレてるなどと散々ディスれるのは本当のところ、ディスったところで相手が痛くも痒くもないことを分かっているからだ。支援者から党の関係者から利害関係者から陳情を訴えるひとまで、様々なひとがこの事務所を訪れるのだろうけど、どう頑張ったって朱莉は支援(される)者にしか見えないだろう。
ああとかうんとか、できる限りこちらの情報を与えないようにと意識すると、自然と言葉数が少なくなる。
この前のことは気にしないでと言うべきか迷って、でも結局何も言わずに事務所を出た。
もうこれきり関わることはないだろう、と晴れ渡った青空を見上げ……そう思うのは何度目か、と、はたと気づく。彼と別れるときいつも、もうこれきりだと思っている。二度と会いたくない、というんじゃない。本来絡まるはずのなかった糸をほどいたときのような気持ちに似ている。会いたいとか会いたくないとかではなく、会えないものだ、と。これもある意味で運命なのかもしれない、と。
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