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第59話

「具合?」 『ええ、具合が……』 「具合って何だよ」 『この前……から、そろそろ一ヶ月ですよね。ひとによって周期は違うと思いますけど。そろそろ……大丈夫、なのか……と』 「教えない」  彼の「でも」と、朱莉の「なーんて」とが、重なった。 「実はちょっと、来てたりする」 『すみません、そんなときに長々と……』 「別に、薬も飲んだし大丈夫。それにあんたの声が聞けたからさ、いい感じに一発出したらスッキリしそう」 「今、行って大丈夫ですか」 「今……って、いや何言ってんの。そっち忙しいのに」 「大丈夫です。私に用があるひとはいませんので、いくらだって抜けられます。川澄さんは大丈夫ですか?」 「大丈夫……じゃ、ねーよ。今から寝ようと思ってたのに。身体のことだったら気にしなくてもいいから」 「すみません、大丈夫か、なんて訊いておいて申し訳ないですけど、やっぱり大丈夫じゃないです、私が」 「は?」 「会いたいです、川澄さんに」  会わせてくれませんか、と、彼は繰り返した。  駄目だ、と言っても押し切られそうな予感がした。こんなのは初めてだった。  やめろ、と押し戻したらそれ以上は踏み込んでこない……むしろ押し戻されることを察知してあらかじめ距離を取っておく……そういうタイプだと思っていたのに。 「会いたい、とか中途半端なこと言うなよ」  横向きになりながら喋ると、声がいつもと違う感じになる。 「どうせなら抱きたいって言ってくんない?」

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