59 / 150
第59話
「具合?」
『ええ、具合が……』
「具合って何だよ」
『この前……から、そろそろ一ヶ月ですよね。ひとによって周期は違うと思いますけど。そろそろ……大丈夫、なのか……と』
「教えない」
彼の「でも」と、朱莉の「なーんて」とが、重なった。
「実はちょっと、来てたりする」
『すみません、そんなときに長々と……』
「別に、薬も飲んだし大丈夫。それにあんたの声が聞けたからさ、いい感じに一発出したらスッキリしそう」
「今、行って大丈夫ですか」
「今……って、いや何言ってんの。そっち忙しいのに」
「大丈夫です。私に用があるひとはいませんので、いくらだって抜けられます。川澄さんは大丈夫ですか?」
「大丈夫……じゃ、ねーよ。今から寝ようと思ってたのに。身体のことだったら気にしなくてもいいから」
「すみません、大丈夫か、なんて訊いておいて申し訳ないですけど、やっぱり大丈夫じゃないです、私が」
「は?」
「会いたいです、川澄さんに」
会わせてくれませんか、と、彼は繰り返した。
駄目だ、と言っても押し切られそうな予感がした。こんなのは初めてだった。
やめろ、と押し戻したらそれ以上は踏み込んでこない……むしろ押し戻されることを察知してあらかじめ距離を取っておく……そういうタイプだと思っていたのに。
「会いたい、とか中途半端なこと言うなよ」
横向きになりながら喋ると、声がいつもと違う感じになる。
「どうせなら抱きたいって言ってくんない?」
ともだちにシェアしよう!