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第80話
経過は順調だった。
二回目の健診で心拍が確認でき、尿検査や血液検査も特に異常がなかった。これが十月十日続いたら地獄だ……と思っていたつわりも、一ヶ月経つか経たないか、というところで、すこん、と終わった。喉元過ぎると暑さを忘れて動き回った翌日、お腹に張りを感じてもしや切迫か、と焦り、しばらくは馬鹿みたいに慎重になって、でも太りすぎると妊娠高血圧になるからと思い直して、今度は馬鹿のひとつ覚えみたいにストレッチにいそしんだ。
『つわりが重いと安産・軽いと難産』なんて、見なきゃいいのに見てしまったネットの情報におろおろしたり、胎動を感じる時期なのにおかしい感じない! と大騒ぎしたものの、実はちゃんと胎動があったのにお腹の調子が悪くて腸が動いていると勘違いしていただけだったり、さぎみやはるこに妊娠を報告したら、何をどういう風に彼女が周囲に言ったのか、まだ性別も決まっていないうちから男の子向けの服やらおもちゃやらが後援者から続々届いたり……そんなひとつひとつにバタバタして、でもおしなべて見れば平凡な毎日だった。
予定日は四月二十日。
いい時期じゃない、と、そこは何故かさぎみやはるこに過剰に褒められた。
予定日をカレンダーに記そうとして、来年のカレンダーがまだないことに気づいた。今までそんなに先の予定が決まっていることなんてなかったからだ。
そうか、春になったら子どもに会えるんだ。
カレンダーを最後までめくって、とりあえず十二月のページに、4/20と書いた。
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