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第97話

 脂汗を垂らしながら、麻酔や手術リスクの同意書にサインする。同意します、同意します、同意します……  何に同意しているのか分からない。あと数秒この用紙を見つめていたらビリビリに破いていた、その直前で、スッと看護師に回収された。  ストレッチャーに乗せられ、オペ室に移動する。 「……大丈夫です、初めてじゃないから」  不安がらせまいとあれこれ言葉がけしてくれる看護師に対して、何故かそんなことを口走っていた。 「慣れてますから、どうってことないです」  慣れている……そう……慣れている……  見覚えのある、手術室のライト。  手術室は思っていたより広くて、真ん中にベッドがぽつんとひとつ。ひとりで戦え、と、急に突き放されたように感じる。  マスクをされると、すぐに意識が遠のいていった。  ……罰だ。  意識が完全になくなる一歩手前、唐突に悟った。  この痛みは、罰されている痛みだ。  だったら自分はもっと、痛みを受け入れないといけないんじゃないか。痛みに切り裂かれて、焼かれて。こんな風に簡単に楽な世界に逃げ込んでしまったらいけないんじゃないか。やめてください。手術しないで。先生。お願いどうか。死んだこの子をずっとお腹の中にいさせてください。罪を掻き出さないでください。抱えさせてください。もうこれ以上、これ以上……

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