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第122話

 もう一度、脱がせた服を丸めて叩く真似をしてやる。笑顔が見えて、ほっとする。  服を洗濯カゴに入れようとしたとき、ふっと魔がさした。抱えるようにして、顔をうずめる。享のにおい。汗のにおいもするけれど、不思議と嫌な感じじゃない。ずっとこの中に埋もれていたい……  リビングの方から足音が聞こえたので、慌ててカゴに放り込む。  そういえば発情期が近い。  でもこんなときに、享の手を煩わせるようなことを言っちゃいけない。必死で律しようとしたのに、 「朱莉さん、いいにおい」  いきなり後ろから抱きつかれ、抑えていたものが一気にバンッと弾け飛んだ。 「癒される……」 「享……」  享の鼻先が首筋に当たる。息を感じる。さっきよりもずっとずっと濃いにおい。ぎゅっと抱きしめられる。こんなに幸せな拘束は他にない。 「享、とお……」  駄目だ。それ以上されたらもう保たない。なのに背中にどんどん重みを感じて…… 「享!」  たまらずバッと振り返ったが、重みに負けて押し倒される。しかし朱莉の上で享はぴくりともしない。 「享……?」  頭上から聞こえてくる寝息。すっかり夢の中だ。 「大変だもんな……」  膝枕をしてやりながら、頭を撫でる。心地いい重み。すうすうと規則的な寝息。こんなところで寝たら身体に悪いと思いながらも、あとちょっと、もうちょっとと思いながら頭を撫でる。

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