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第131話
「鷺宮亨です。よろしくお願いします」
と、買い物を終えて帰ってくるなり、先に帰っていた享に、出迎えざまに握手された。
「はい、これが今日で最後の握手」
「何人と握手したの」
「もう数えきれないですよ。誰と握手したのかも。でも相手は覚えているでしょうからね」
「すごい、何か、アイドルの握手会みたいだな」
「だったらいいんですけどねえ。求められて、というより、お願いの握手ですからね……。でも朱莉さんに握手してもらって、元気が出ました」
一日の最後だというのに享の握手は力強く、放してしばらくしてもまだ、手の感触が残っていた。
翌朝、出かける前も、享は手を差し出してきた。
「いってらっしゃい」
元気を送るように、力強く握りしめる。
「いってきます」
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