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第133話

 練り歩いたあとは、咲田市内で一番大きな駅前で街頭演説の予定がある。  享と出会った駅前だ。  他の場所で演説するときとは、心構えが少し、違う。  さぎみやはるこのイメージカラーはピンクだったが、享は緑。幟に、ポスターに、スタッフのパーカー……駅前が緑に染まる。  後援会のひとを中心にすでに人だかりができていて、亨がその中心に立ち、マイクを握ると、拍手が沸き起こった。 「地元・咲田の皆さま、こんにちは。咲田市議会議員候補・新明党公認の鷺宮亨です。生まれ育った咲田の街を元気にし、新しい風を吹き込むため、全力で戦い抜いてまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます」  第一声が発せられると、足を止めるひとも出始めた。よろしくお願いします、と頭を下げながら、怪しい動きをしているひとがいないか、亨をガードするのも朱莉の役目だ。 「……市政に挑戦するにあたり、取り組みべき課題はたくさんありますが、バース問題は、避けては通れない課題だと思っています。オメガ雇用促進法が施行されて以来、ここ数年で確かに、制度は整えられてきました。しかし実効性のあるものとは到底言えない。バース性によって苦しんでいるひとがまだまだたくさんいます。また、バース差別は、オメガだけに限ったものではありません。アルファも、ベータも、その性によって苦しんでいるひとに等しく、支援の手が差し伸べられるべきではないでしょうか」  拍手が沸き起こる。有り難うございます、有り難うございます、と、まんべんなく手を亨は振って応えている。 「しかし、バース差別根絶を公約に掲げている私が言うべきではないのかもしれませんが、バース問題を政争の具にするのは間違っていると思います。この課題は市が、県が、国が、当然のように取り組むべき課題だからです。当たり前のことが当たり前になされていない。その現状を私は変えたいのです」

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