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第143話
朝昼兼用のご飯を食べたあと、投票所である小学校に向かう。さぎみやはるこの選挙のときにも行った、亨の母校。
人目につくかなと思ったけれど、幸い人影もまばらで、話しかけられることはなかった。
万が一にも無効票になんてならないよう、『さぎみやとおる』と一文字一文字、しっかり書いて、投票箱に入れる。
前回、さぎみやはるこのときには無効票になってしまった『さぎみやとおる』が、今回は貴重な一票になる。前回のぶんと合わせて二票にならないかな、なんて馬鹿な妄想をしたところで、丁度投票用紙を書き終え、投票箱に向かう亨と目が合った。
「ブランコ」
と、校舎を出たところで、亨はおもむろに校門に向かう道から逸れ、校庭の方へと向かった。慌ててそのあとを追う。ブランコの鎖を揺らしながら、「懐かしいですね」と、亨は座ろうとしたが、思ったより低すぎたのか、目測を誤って尻餅をついてしまっている。
「何やってんだよ」
「すみません、ちょっと、浮かれてしまいました」
尻に砂がついていたので、ぱん、ぱん、と払ってやる。
「落ちるとか、超縁起悪い」
「本当ですね」
警備員がこっちに向かってくるのが見えたので、何もしていなのに疚しい気持ちに襲われて、ふたりでそそくさと小学校をあとにする。小学校前の横断歩道を渡りきったところで、思わず顔を見合わせて笑っていた。
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