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第4話

 元老院は波のように揃って朔眞と楓に礼をするが、ここまで来た楓に眉をひそめている。規律を厳守する元老院たちからすれば、報道陣や国民に見られる可能性のある場所まで楓が出てきたことに不満を抱いているのだろう。そんな思いがありありとわかってしまう楓は小さく苦笑して、腕の中で眠っている倖陽を朔眞の腕に預けた。朔眞も慣れた手つきでしっかりと幼い我が子を抱き、そして楓の額に口づける。  楓は心配そうな眼差しを向けながらも、鹿音たちに促されるようにして陰にある椅子に座った。朔眞と悠、そして元老院たちは表へと向かう。扉が開き、割れんばかりの歓声が楓の耳に響いた。そして倖陽の甲高い泣き声が響き渡り、楓は思わず立ち上がるが鹿音と鹿胤に大丈夫だからと宥められ、抑えられていた。  そんな中の様子はわからない朔眞は、人々の歓声とフラッシュの嵐にビックリして起きた倖陽をポンポンとあやしていた。しかし自分を抱いている腕が楓ではなく、いつもなら聞こえる声が聞こえないことに楓が側にいないと察したのか、倖陽は顔をぐしゃぐしゃにして泣き続けた。しかしそんな泣き顔も元気で可愛いと報道陣や国民は顔を綻ばせる。朔眞は泣きすぎて吐いてしまわないかと内心ヒヤヒヤしながらも、大公として笑みを浮かべた。 「こちらのカメラに大公子を!」 「待望のお子様誕生ですが、一言っ!」 「大公妃様のご様子はいかがですか!? 出雲大公様や駿河大公様から何かコメントはありましたか!?」 「どうぞこちらのカメラにも視線を!」  次々に記者たちが朔眞に要望を叫ぶ。その叫び声にますます倖陽が泣いてしまった。朔眞は倖陽のお尻をポンポンと楓のように優しく叩くが、やはり本人には違いがわかるようで泣き止んでくれない。この泣き声はきっと中にいる楓にも聞こえているだろう。気をもんでいるに違いない番と泣いている我が子の為にも早く終わらせようと、朔眞は元老院に一瞬目配せをして倖陽をあやしながら口を開いた。 「番も無事元気で、共に我が子の誕生を喜んでいるよ。大公や大公妃からも祝いの言葉をいただいた。こうして無事皆の前に披露目できて嬉しく思うが、どうにもこの子は慣れない様子だから、これで失礼。来てくれてありがとう」  まだもう少しと粘る記者たちを笑顔で躱して、悠や元老院に守られながら踵を返す。朔眞が中へ入った瞬間、泣きそうな顔をしながら楓が駆け寄ってきた。それに慌てて元老院たちが扉を閉めるが少し遅かったようで、報道陣たちが閉まる扉の合間を写そうとフラッシュをたいて大公妃様! と叫ぶ。元老院は眉をひそめながら扉を閉めるが、楓には朔眞と泣いている倖陽しか見えていなかった。

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