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第22話

「美鈴」   振り返ろうとすると、美鈴が腕に力をこめた。 「和希。もしかして他に好きな人できた?」  俺は美鈴の腕を外すと、キッチンの狭いスペースで向き合った。 「そんなわけないだろ。なんでそんなこと考えるんだよ」 「だって和希、突然大事な話があるなんて言うし。結婚するまでキス以上のことをしたくないって言ったから、私のこと嫌いになったかと思って」 「そんなことで嫌いになんかなったりしないよ。そういう真面目な美鈴が、俺は好きなんだ」 「和希」  美鈴が瞳を潤ませ、俺を笑顔で見上げる。  俺はそんな美鈴を見つめているうちに、愛おしいという気持ちが胸に広がるのを感じた。  美鈴は俺を信頼している。  これ以上、そんな美鈴に嘘はつきたくなかった。 「美鈴。聞いてくれ」  俺は美鈴の華奢な肩を両手でしっかりと掴んだ。 「俺はオメガだったんだ」 「またもう。冗談はやめてよ。それ全然面白くないから」  美鈴は俺の話を全く信じていない様子だった。  仕方なく俺はジーンズのポケットに入れていた性差検査の結果票を取り出し、美鈴に渡した。  美鈴がたたまれた紙を広げ、目を見開く。 「嘘でしょ」  美鈴は真っ青な顔をしていた。 「美鈴、俺は」  美鈴が自分の肩に置かれていた俺の手を払う。 「どういうこと?私のこと騙してたの?」  いつも冷静な美鈴がこんなに取り乱すところを見たのは初めてだった。 「騙すつもりなんてない。検査日を見てみろよ。俺だって、昨日、自分がオメガだと知ったんだ」  美鈴が検査結果に再び目を落とす。 「こんなの何かの間違いよ。和希が。私の許嫁がオメガなんて……」  ぶつぶつ呟きながら、長いこと美鈴は検査結果を見つめていた。ふいに美鈴が床に紙を落とす。

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