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第55話

「もう一回しよ」  唯人が濡れた己の熱を俺の内股に擦りつける。 「しない。ヒートでもあるまいし、そんな5回も6回も付き合ってられっかよ」 「いいじゃん。あと1回だけ。な?」  唯人が耳の穴に舌をいれ、俺のない胸を揉んだ。  俺は両腕を振り回し、抵抗した。 「しないって言ってんだろ。てめえ、いい加減に」  ゴッと鈍い音がした。  どうやら俺が握っていたスマホが唯人の顔面に直撃してしまったらしい。  俺は慌てて振り向くと、鼻のつけ根を押さえる唯人の肩に触れた。 「ごめん。大丈夫か?」 「うん。平気」  そう言って鼻を押さえる唯人の腕に赤い筋が垂れる。 「唯人。血、血」  俺はティッシュペーパーの箱を唯人に押し付けた。 「ああ。鼻血がでたんだな」  唯人は事も無げに言うと、ティッシュを丸めて鼻に突っ込んだ。  鼻から飛びでたティッシュが赤く染まる。 「本当にごめんな。保冷材で冷やす?」 「こんなのすぐ止まるから、平気だって。俺もしつこくして悪かったな」 「いや、それはいいんだけど。唯人、鼻、大丈夫ならそろそろ帰ったら?俺、明日の朝早いから、悪いけどもう休みたいんだ」  唯人が表情を曇らせる。 「泊まっていったらだめか?」 「俺、明日の朝早いよ?6時には起きるつもりだし」 「分かった。もう和希の邪魔はしない。俺も明日はその時間に起きるから、泊まっていっていいだろ?」  そこまで言われたら断れなかった。 「わかった。おやすみ」  俺は横になるとスマホを眺めた。  最後に明日、道に迷って遅刻しないよう、地図を確認しておきたかった。  唯人も隣に寝転ぶと俺の体を抱きしめた。  わざとなのか。勃っている熱を俺の腰にあててくる。  俺は唯人を睨みつけた。 「邪魔しないって約束したよな」 「だって和希が隣にいると思うと」  眉を下げ、情けない表情で唯人が言う。  俺は大きくため息をついた。 「一回抜けばましになると思う」  唯人は枕元に座ると、己の屹立を扱き始めた。  こいつ本当に底なしの性欲してんだな。  俺は呆れた気持ちで、鼻にティッシュを詰め、自慰をするイケメンを見つめた。

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