66 / 100
第58話
翌日の専門学校の入学式は、気持ち良く晴れていた。
「この学校ではアルファ、ベータ、オメガ。全ての性が平等に授業を受けられるように配慮しております。
ヒートで授業を受けられなかったオメガの生徒を別の日に補講という形でフォローもしています」
学長が入学式のあいさつでそう語った。
俺がこの学校に決めた理由の一つがそれだった。
オメガの生徒を積極的に受け入れているというパンフレットに惹かれ、過ごしやすそうだと感じた。
授業はまだなかったがクラス分けの発表をうけ、顔見知りになった新入生の何人かと俺は連絡先を交換した。
入学式は全てが順調だった。
それから半年、俺はすっかり学校生活に馴染んでいた。
実習も座学も楽しく、今まで通っていた大学よりよほど熱心に勉強していた。
授業のあと、大学近くのカフェに、仲良くなったクラスメイトのオメガ二人とお茶をしに寄った。
クラスにはアルファも数人だがいたし、ベータもいたが、どうしても同じ性差の人間と群れてしまう。
製菓学校の生徒ということもあって、三人ともスイーツには目がなかった。
全員、飲み物とケーキを二つずつ注文する。
俺の前に座った小柄で天然パーマの皐月(サツキ)がはあっと息を吐いた。
「やっと金曜が終わった。俺、本当にミッチ嫌い」
「あいつのこと好きな奴なんているの?」
隣に座る眼鏡をかけて日本人形のように整った顔立ちの弥生(ヤヨイ)が辛らつな口調で言った。
俺達の学校には曜日ごと、異なる教師が実習で指導するため訪れる。
ミッチは金曜、焼き菓子の担当の教師で、ヨーロッパの有名なスイーツの賞を受賞したアルファのパティシエだった。
彼の実習は最初から最悪だった。
いきなりオメガをアルファとベータとは別の班に分けたのだ。
理由はオメガは能力が低いから、せっかくちゃんとやっている他の生徒の足を引っ張る可能性が高いという。
俺達はその言葉を聞いて唖然とした。
ともだちにシェアしよう!