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第66話

 実家に着くと、親父は唯人のことを諸手を挙げて歓迎した。  唯人も穏やかな笑顔を浮かべ、親父と握手を交わす。  正直通彦さんと唯人の再会はどうなることかと心配していたが、親父の手前、唯人も礼儀正しく振舞っていて、俺はそっと胸を撫でおろした。    俺は夕飯に帆立の炊き込みご飯、お吸い物、銀鱈の西京漬けを焼いて食卓に並べた。  親父は目を輝かせて、それらを見つめた。  全て親父の好物で、美味そうに炊きごみご飯を頬張る親父を見ていると、俺はつい微笑んでしまう。  親父は俺にお代わりを頼みながら、恥ずかしそうに頭を掻いた。 「親馬鹿かもしれないが、和希の作る飯が世界で一番美味いと思っていてね」  唯人は微笑みながら頷いた。 「俺もそう思ってます」 「うん。俺も嫁にもらいたいくらいだ」 「そういう冗談はやめないか」  通彦さんの言葉に、親父が苦笑する。 「すみません」  通彦さんも笑いながら軽く頭を下げた。  親父と通彦さんは気付いていなかったが、俺は通彦さんを殺しそうな目で睨みつける唯人を見てしまい、慌てて話題を変えた。 「親父。仕事の方はどう?」 「ああ。上手くいってるよ。通彦君が頑張ってくれているからね」 「いや、そんな」  何年も一緒に働いている通彦さんと親父はそれこそ阿吽の呼吸だろう。俺も実はなにも心配はしていなかった。 「唯人君は仕事の方はどうだい?いきなり重役の仕事を任されていると聞いているよ。大変だろう」 「ええ。毎日が勉強です。周りの方々に支えられてなんとかやっています」  唯人の優等生な回答が気に入ったのか、親父が満足そうに頷く。 「私も最初の頃は何をしていても自信がなくてね。失敗ばかりだったよ。そうだ、通彦君と連絡先を交換したらどうかな?私より年も近いし、社会人の先輩として相談しやすいだろ」 「はあ」  二人とも気乗りしていないようだったが、親父に強く勧められ渋々スマホを取り出した。  連絡先の交換が終わると、唯人のスマホが音をたてた。 「ちょっと失礼します」  唯人が席を外した。  それと同時の親父もトイレに立つ。

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