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第78話

「俺をアルファに戻す方法はあるのか?」 「……やったことないから、分からないけど、多分できない」 「そうか」  俺は立ちあがった。 「和希。許してくれ。頼む。お前が居なくなったら俺は駄目なんだ。お前はこれが愛じゃないっていう。でも俺はこんな愛し方しか知らないから」  唯人が俺の足に縋りついた。 「人の性差を勝手に変えるのがお前の愛なら、俺はお前に愛されたくなんかなかった。二度とお前の顔は見たくない」  俺が背中を向けると唯人の絞り出すような声が聞こえた。 「俺が死んだら……もし死んだら、和希は許してくれるか?」  俺は振り返って、床に座りこんでいる唯人を見つめた。 「和希に一生会えないなら、声も聴くことができないなら……俺が生きている意味なんてないから」  泣き笑いの表情を浮かべ、唯人が言う。 「死ぬなんて絶対に許さない」  唯人の表情が少しだけ明るくなる。  俺はしゃがみこむと唯人に目線を合わせた。  唯人の綺麗な黒目が不安定に揺れている。 「そんなに俺に許して欲しいのか?どうしてもっていうなら方法を教えてやろうか?」  唯人が何度も首を上下させる。  俺はにっこりと笑った。 「お前も堕ちてこいよ。ここまで」  そう言って俺は自分の首輪を指さした。 「そうしたらようやく俺の気持ちも理解できるはずだ。どれだけオメガが世間から見下されているのか、お前も実感できるぜ」  俺は唯人のうなじを人差し指ですっとなぞった。  唯人が呆然と俺を見る。 「この前、俺にシルバーの首輪くれようとしたじゃん。あれ俺より絶対お前の方が似合うよ」  俺は立ちあがると、今度こそ唯人に背をむけた。 「できないだろ?だから結局、お前の愛なんてその程度なんだよ。二度とその顔、俺に見せるな」  そう言って俺は一度も振り返らずに、唯人の部屋を後にした。

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