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第82話
「今、思えばおっしゃる通り、酷いことをしたと思っています。唯人さんはそんな大人げない私が依頼した仕事を全てきちんとこなし、文句ひとつ言いませんでした。どっちが年上かわかりゃしませんよね。ですが、その期間があったからこそ私は考えを改めることができましたし、彼にちゃんと秘書として尽くそうと思えたのです」
住友さんはどうして俺にそんな話を聞かせるのか。分からなかった俺は戸惑った表情で彼を見つめた。
「ある日、私は唯人さんに尋ねました。何故そんなに頑張るのかと。もし私のことを鬱陶しいと思えば、唯人さんは私を首にできる立場なのですから。仕事を適当にやっても怒らない秘書など他にたくさんいたでしょう。
それでも彼は文句も言わず私が与えた膨大な仕事を全て一人でこなしました。
そこまでするのは何か理由があるのかと私は気になりましてね。
そうしたら唯人さんはおっしゃいました。
自分には大切な番が居る。
番は正義感が強く、真っ当な奴だ。
自分は過去に人に自慢できないようなことばかりしてきた。
もちろんこれからいくら頑張ってもその過去は消せない。それでも少しでも、番のあいつの隣で胸を張れるような人間になりたい。
そうおっしゃいまして。
意外と真面目な方なんだと……久我山さん?」
握った自分の手の甲に雫が落ちるのが分かった。
俺は涙を拭うと鼻を啜った。
「すみません。俺、ちょっと今情緒不安定っていうか」
「唯人さんと何かあったんですね」
「あいつとは別れました。俺が、あいつの過去の過ちをどうしても許せなくて」
「そうですか。唯人さんはここ最近、仕事はいつも通り真面目におこなっていますが、眠れていないようですし、食事もまともにとっていないようで気になりましてね。このままだといつ倒れてもおかしくないような雰囲気なんですよ。それはあなたも同じようですがね」
住友さんに見つめられ俺は目線を逸らせた。
「では、私はこれで」
「えっ」
突然立ち上がった住友さんに俺は声を上げた。
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