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告白まであと少し

 風呂に入り、適当に髪を乾かすと、俺は大きなベッドにどさりと横になった。  高級羽毛布団の肌触りは最高なのに、ついため息をついてしまう。  今の職場に勤め始めて5年が経った。  ケーキ屋の仕事は好きで楽しいが、かなりの重労働だ。  55歳の店長が、もう体力的にきついから、俺に店を譲りたいというのも頷ける。  でも俺はまだ二十代だし、自分の店を持つって自信、そこまでないんだよなあ。  そんなことを先日、店長から店を譲り受けてもらえないかといわれた時から俺はぐるぐると考え続けていた。  寝室の扉が開き、スーツ姿の唯人が顔を覗かせる。 「今日は寝るのが早いんだな」 「おかえり。なんだか疲れちゃって」 「ただいま」  唯人はベッドに腰かけると、俺の足首に手を伸ばした。 「マッサージしてやるよ」 「いいよ。唯人だって帰ってきたばかりで疲れているだろ」 「いいから、いいから。最近、俺のほうは仕事が落ち着いているんだ。だからこうやって早く帰れるってわけ」  早いといっても、唯人の帰宅時間は俺よりだいぶ遅かった。  唯人は俺をうつ伏せにすると、ゆっくりとふくらはぎを揉み始めた。 「唯人、お腹空いてない?リビングにラザニアとミネストローネ置いてあっただろ?温めてから食べて」 「ああ、美味そうな匂いがしてたな。マッサージが終わって、和希を寝かしつけたらいただくよ」 「寝かしつけって、俺は赤ん坊じゃないぞ」  くくっと笑う唯人の声が聞こえる。 「分かってるって」  そう言って微妙な力加減で俺の腿を揉む。  唯人は早く帰れる日は、こうやって寝る前に俺の体をマッサージしてくれた。  最初の頃と比べて唯人のマッサージの腕は格段に上がっている。  やばい……気持ちいい。本当に寝ちまうかも。  俺は大きなあくびを一つした。 「何か、悩んでいるのか?」  唯人の穏やかな声で、俺の意識が浮上する。

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