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告白まであと少し2
「昨日も、夜中に何回か起きていただろ?眠れないような悩みでもあるのかと思ってさ」
「気付いてたんだ。実は店長から店を譲りたいって言われててさ」
「えっ、すごいじゃないか」
唯人の手が止まる。
「うん。俺もその気持ちはすごく嬉しかったんだけど、俺まだ二十代でパティシエとしてはペーペーで、腕も大したことないし。そんな俺が店長から大切な店引き継いで立派にやっていけるのかなって」
唯人が今度は俺の肩から背中にかけてをもみほぐし始める。
「和希はもう店に出しているケーキのほとんどを、一人で作れるようになっているんだろ?」
「うん、一応。朝一番に店長に味をチェックしてもらっているけど」
「じゃあ、自分が大したことないって思っている腕で作った物を、お客様にお金をだして買って貰っている状況って失礼だと思わないか?」
唯人の問いに俺はぎくりと体を強ばらせた。
「ごめん。意地悪な言い方したな」
唯人が俺の腰を揉み始める。
「店長だって和希のことを認めているからこそ、ケーキ作りを任せているんだろうし、大事な店を継いで欲しいって言ったんだろ?その和希が自分のケーキなんかって考えてちゃ、ダメなんじゃないかな」
唯人の言う通りだと思った。
俺は自分の不安ばかり考えて、店長や買いに来てくれるお客さんのことを考えていなかった。
「まあ、俺もそう偉そうなこと言えないけどな。初めて出席した会議で意見を求められた時、発言はしたけど、声は上ずっているし、足は震えて、すげえみっともなかった。あとで住友にもこっぴどく叱られたよ。あんなんじゃ、どんないい意見をいったところでなにも伝わりませんってね」
「住友さん、怒ったら怖そうだもんな」
「怖いなんてもんじゃない。鬼だね、あれは」
俺と唯人は声を合わせて笑った。
「和希。立場が人を作るともいうだろ?不安だろうけど、店長の気持ちを汲んで、やってみたらどうかな?」
「うん。唯人、ありがとう。俺……」
その瞬間、体が熱くなり、ぶわりとリンゴの香りが漂った。
ヒートだ。
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