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嗜虐と恍惚と、屈辱と 9

緋音の少し高めの声に微かに怒りが滲(にじ)んだ。反射的に珀英は、ソファに座る緋音に向き合う形で床に正座する。そしておもむろに手をついて土下座する。 「大変申し訳ございませんでした」 「お前さ・・・何でオレが怒ってるか本当にわかってる?」 「えっと・・・」 「わからないのに謝んな」 「すみません」 珀英は土下座したまま顔を上げられず、緋音の足元にうずくまるように小さくなっている。 緋音はデカい図体してる男がこんなふうに、自分に跪(ひざまず)く感じが少し愉(たの)しくなってきていた。 愉しくもありむかつきもあるので、緋音は包み隠さずありのままを珀英に告げた。 「お前が風邪引いた時、看病に行って無理やり犯されたんだけど」 「えっっっ?!」 反射的に顔をあげた珀英を、緋音は脚を組んでソファに深く寄りかかって、腕も組んで冷ややかな瞳で見る。 珀英はあれが夢じゃなかった事に愕然(がくぜん)としていた。 緋音を縛って組み敷いて、無理に突っ込んで、わりと本当に無理に何度も突っ込んでしまった。 あれが夢じゃなくて現実だったと・・・。 珀英は再び頭を下げる。今度は理由がわかったので、本気で謝った。 「本当に大変申し訳ございません」 「せっかく買ったお粥であんな事されるなんてな」 「誠に申し訳・・・」 土下座して謝罪の言葉を言い続ける珀英。 緋音は少しだけイラっとしたので、珀英の左肩に右足を乗せて、ぐいっと押した。 必然的に珀英は体を起こして、同時に体を屈(かが)めた緋音の顔と、ぶつかりそうなくらい近い距離まで近づく。 バスローブなのに脚を広げるから、太腿とか色々剥(む)き出しで、無理やり犯りたくなるから、勘弁して欲しい。 顔も息が触れるくらい近くにあって、胸がはだけてて小さな乳首とか見えてるし、異常な色気と圧迫感に眩暈(めまい)がする。 真っ赤な口唇と少し怒った薄茶の瞳に吸い込まれそうになる。 少し長めの黒髪が頬にかかって、真っ白い肌をより際立(きわた)たせる。 通った鼻筋と長い漆黒の睫毛(まつげ)と。滑らかな頬のラインと、流れる鎖骨までの曲線。 今まで見た人の中で、誰よりも奇麗で何よりも扇情的で、触れちゃいけないのに触れたい。 この人に触れたい、舐めたい、噛んで食いちぎって、どこまでも服従したいと、思ってしまう。 珀英は思わず、溢れてきた生唾を飲み込んだ。 服従欲と、性欲と、征服欲と、嗜虐(しぎゃく)と、ぞくぞくするくらい、異常な様々な感情が体を、心を魂を満たす。

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