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第37話
昼休みになって、親睦を深めようと中林さんと二人で近くのカフェにやって来た。
凪さんは仕事があるらしく、二人で行っておいでとのこと。
「専務とはどこまでいったの?」
「……」
突然の質問、しかもその内容に驚いて固まる。
中林さんは慌てて「ごめんなさい」と謝ってきた。
「どうしても気になっちゃって……。だって二人とも顔が良いしスタイル抜群だし……馴れ初め気にならない?」
「そう、ですかね……。でも、出会って一ヶ月くらいだし、一緒に暮らしてはいるけど、特に何も……。」
「え、セックスは?」
「中林さんっっ!!」
真昼間から何を言っているんだこの人は。
クールビューティーだと思っていたけど違ったらしい。
「……してないの?」
「……してませんよ。」
「キスは?ちょっと触れ合ったりは!?」
「それは……まあ、たまに……」
注文した料理が運ばれてくる。
頼んだ物が揃ってから手を合わせてフォークを持った。
今日のランチは俺の好物のクリームパスタだ。
「ダメよ。それはダメ。専務ってすごく人気なの知ってるでしょ?」
「知りません。でもあの容姿だと人気でしょうね。」
「人気も人気よ。他の幹部の秘書達はいつも私に羨ましいって言ってくるんだから!」
「……嘘」
「本当!」
中林さんの言葉にフォークに巻き付けていたパスタをポロッと落とし、皿の中に戻ってしまった。
真剣に俺を見た彼女は、箸で切り分けたハンバーグを食べゴクッと飲み込むと、小さく息を吐いて箸を置いた。
「まだ番でも無いんでしょ?」
小声で聞かれて頷く。
だって、次の発情期が来るのはあと二ヶ月後。
番になるには発情期中に項を噛んでもらわないといけないわけで、今すぐなりたくてもなれない。
「どうしたらいいんでしょうか……。」
「そうね。まずは私に対する敬語をやめてもらえると嬉しいかな。二十四歳よね?私達同い年よ。」
驚いて目を見開く。
大人っぽいしクールに見えるからか、年上だと思っていた。
「同い年?」
「そう。入社二年目のぺーぺー。第一秘書が少し前までいたんだけど、寿退社されたの。一応専務には信頼されているみたい。他の所から第一秘書をって話が出た時に、第二だった私が第一になれば問題ないって有難いことを言ってくださったの。」
「なるほど……」
「あ、信頼されているみたいって言うのは仕事のやる気のことね。別にお互いそういう目で見てるわけじゃないから安心して。」
「うん。そこは疑ってない」
パスタを食べて、咀嚼し飲み込む。
凪さんが俺の事を誰よりも愛してくれているのはわかっているつもり。
「たまーにチラって見えるそれは専務からもらったの?」
中林さんが俺の首を指さしてニヤニヤしながら言うから、恥ずかしくなって慌てて首を隠した。
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