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第112話

思えば、以前の休日もこんな感じだったな。 一人で素っ気のない昼ご飯を食べる。 話し相手も、休みに一緒に出かける友達も居なくて、ただ何もせずに生きていたのを思い出す。 「……凪さん、早く帰ってこないかな。」 一人になると余計なことを考えたり、思い出したりしてしまう。 早々にカップの中を汁だけにして片付けた後、急いで歯を磨いて仕事を再開した。 渡された仕事はそんなに多くなかった。 そもそも家でできる仕事は少なくて、それなのに性格と時間があるせいか、完璧に仕上げたくて早く切り上げることができない。 「あー……もう、また見つけた……」 気になることが多い。ムシャクシャして、せっかく印刷した紙をぐしゃぐしゃに丸めた。 何度目かのそれを繰り返し、泣きそうになってきた頃、肩をポンッと叩かれて驚き振り返る。 「ただいま」 「……おかえり、なさい……」 そう伝えてから、部屋を見渡す。 あちこちに紙が散らばって、なんとも悲惨な状態だ。 それに、何の用意もできていない。 「今日の仕事は終わり。お腹空いただろ。用意するからこっちで待っててくれる?」 「……部屋、片付けます。」 「ううん。真樹はソファーに寝転んで、少し目を閉じて休みなさい。」 「……こんなはずじゃなかったんです」 とっくに仕事を終えて、疲れて帰ってくる彼のために何とか食事を用意してお風呂も沸かしておこうと考えてはいたのに、実際はこの有様。 完璧主義で仕事を進められなかった自分に嫌気が差す。 「大丈夫だよ。お疲れ様。さあ、こっちにおいで。」 手を取られ、ソファーまで移動してそっと座らされる。 頭を撫でられると途端に眠たくなってきてしまって、「休んでいてね」と優しい甘い言葉に頷き、体を横にして目を閉じた。

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