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第113話

ハッとして目を覚ますと夜の九時だった。 飛び起きて凪さんを呼ぶ。 「どうかした?」 お風呂上がりなのか、濡れた髪をタオルで拭いていて目をぱちぱちとさせる。 お腹がぐーっと音を立てた。 「ご飯にしようか。気持ちよさそうに眠ってたから起こすのが申し訳なくて、先に食べたんだ。」 「……うん」 「真樹?」 「ごめんなさい、寝てしまって。」 ご飯、一緒に食べたかったな。 そんなわがまま、何もしていなかった俺が言うべきでは無いと思ってぐっと飲み込む。 「何か言いたいことがある?」 「う……」 唇をぐっと噛んで、彼に抱きついた。 これは俺が我慢しないといけないこと。 そう思ってグリグリと額を押し付けると、頭を優しく撫でられる。 「お腹空いてない?」 「空いてる」 「食べようよ」 「うん」 体を離して、一緒にキッチンに行く。 味噌汁を温めご飯をよそってテーブルに準備した。 「納豆食べる?」 「食べる」 おかずと一緒に納豆を持ってきてくれた彼は、俺の前の席に座って炭酸のジュースを飲んでいる。 「いただきます」 「召し上がれ」 肘をつき、そこに顎を乗せた彼は、俺の食べている姿をじっと見てくる。 「……食べれない。そんなに見ないで」 「食べてる姿が可愛い」 「何か……裸をジロジロ見られてる気分」 「それはまあ、いつもの事では?」 「……」 ムカッとして睨みつける。 それとこれとは全く別だと思う。 「あ、怒った?ごめんね、可愛くて。」 「……少しの間、放っておいて。」 「今日は機嫌が悪いね?」 「……自分に嫌気が差してるだけです。」 「何かあったの?」 箸を置いて、溜息を吐く。 「前に凪さんが言いました。俺は完璧主義者だって。」 「そうだね。」 「今日、そのせいで仕事が終わりませんでした。……いえ、仕事自体は終わったんですけど、ちょっとしたことが気になって気になって仕方がない。」 「ああ、それで紙がいっぱい落ちてたのか。」 「ごめんなさい」 無駄遣いをしてしまったことに謝ると、凪さんはふんわりと笑って「大丈夫」と言う。 「気になっちゃうことを気にするなって言うのは無理だと思うし、それは性格だからね。」 「直したいです。」 「性格を?これまでと同じ年月をかけないと、そういうのは直せないんじゃないかな?」 「……じゃあ、四十八になれば直りますかね。」 「わからないな。でも、今のままでいいよ。」 伸びてきた手が頭を撫でる。 それを受け入れて、もっと撫でてほしいなと思っていると、手が離れていく。 「さあ、早く食べちゃって。食べたら風呂に入って、それから真樹が眠れるまで話そうか。さっき寝たから、眠れないかもしれないけど……」 「凪さんは寝てくださいね」 「んー……でも、今日はあんまり真樹と話せなかったから、もっと話したいなぁ。」 微笑む彼を改めて好きだと感じ、ちょっとだけ恥ずかしくなりながら食事を再開した。

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