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第126話

「あの……無理しなくても……」 「っ、違う!無理じゃなくて、僕……あぁ……くそ……。僕はずっとオメガだから、友達とか話し相手が今までいなくて……」 「……」 「多分って言ったのは、話を聞くとかしたことが無いから……」 顔を赤くして悔しそうに俯いた彼。 その姿に少し驚いて、それからキュンとした。 多分、俺がアルファだったら今のように『可愛い』と思うだけじゃ済まなかったと思う。 「ありがとう、上住君。」 「……蒼太でいいよ。俺も真樹って呼ぶ。」 「うん。じゃあ、蒼太。」 スマートフォンが小さく震える。 チラッと画面を見れば、凪さんからメッセージで「気をつけて、行ってらっしゃい。」と来ていた。 「番?」 「あ……うん。」 「そう。幸せそうな顔してる」 「……蒼太は、番できた?」 「ううん。運命の番を見つけないと、こんな性格ひん曲がった俺に付き合ってくれるアルファなんて居なさそうだし。」 「そうかな。蒼太は優しいよ」 力を貸してくれる。 昔、俺は彼に酷いことをしたのに。 「優しくはないけどさ……。ねえ、番ってどんな人?」 「……どんな人って言われても」 「例えばさ、ほら、アルファだからやっぱり優秀?頭は良いし、お金は持ってる感じ?」 「まあ、そうだね。」 少し時間が空いてから飲むキャラメルマキアートは改めて甘くて美味しい。 「いいな。俺は一応就職できたけど、給料がかなり低くて、加えてブラックだし、そろそろ番作って辞めたい。」 「……大変だね」 「うん。セクハラもパワハラもあるし……。ねえ、いい会社知らない?転職したい……」 「うーん……」 いい会社……。正直俺が働いている環境は凄くいいと思っているけれど、オメガになってからは基本的に凪さんと一緒にいるし、会社全体としてはオメガの人が活き活きと働いている印象は無い。 初めはオメガを採用しない会社なのかと思っていたくらいだ。 「真樹は?今、働いてるの?」 「うん。大学卒業して就職した会社でそのまま。性別が変わってからは異動はしたけど」 「異動したの?」 「した。……番の人がその会社の専務で。今は秘書として雇ってもらってる」 「……羨ましい」 ズズっと飲み物を飲んだ蒼太は、時計を見て溜息を吐いた。

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