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第159話

「堂山見て、やばい。この店高級過ぎない?」 「俺も思った」 普段外食をする時に見るメニュー表。そこに書かれてある値段はいつも見るものより桁が多い。 「俺こんなお金もってきてないんだけど。下ろしてきていい?」 「いや、あの……専務の奢りです。」 「うわぁ……。俺本当、専務大好き。前から堂山に対する姿勢とか見て、好感しか無かったけど、また好きになった。」 「俺も凪さん好き。」 「……いや、そういう話じゃない。」 飲み物と料理を頼む。 さっきまではしゃいでいた橋本は、突然真剣な顔をして見てくるから、改めてお礼を言おうと思って俺もふざけるのをやめた。 「助けてくれてありがとう。」 「大袈裟だよ。俺は専務に何かあったのか聞きに行っただけだから。」 「それでも、橋本のお陰で助かったんだ。」 「じゃあ……有難く『ありがとう』を貰っとく。」 「うん。」 お酒が運ばれてきて、乾杯をした。 早速口に入れると、飲みやすさに感動して、空きっ腹だと言うのにごくごく飲んでしまう。 「あ、ダメだって。また酔っ払うよ」 「これ美味しい」 「美味しいけど、ちゃんと考えて飲まないと。また専務に迎えに来てもらわないといけなくなるよ。」 「……確かに。凪さんに飲み過ぎ注意って言われた。」 「専務は堂山の事が好き過ぎるから心配なんだろうな。その気持ち俺には痛いほど分かる。だって堂山可愛いもん」 「何でだろう。凪さんに言われる『可愛い』は嬉しいのに、他の人だと嬉しくない。凪さんの言う『可愛い』が特別に聞こえる。」 「間違いなく特別なんでしょうよ。」 グビっとお酒を飲んだ彼は、また俺を見つめて、それから小さく溜息を吐く。 「俺も番が欲しい。好きな人には尽くすよ、俺。」 「そうだろうね。優しいもん」 「絶対に裏切らないって約束できる。一途だから」 「一途なんだ?」 「……知らない。番ができたことが無いし、好きな人とかも別に居ないし。恋人が欲しいとは思っても、実際そうなるような相手もいない。」 「あー、それわかる。俺も凪さんと恋人になるまではそうだった。」 実際付き合える人は居ないし、そのせいで寂しくなって、その寂しさを埋めるために仕事をしていた気もする。 「でも、番が欲しいの?」 「……違うな。恋人がほしい。その相手の性別がオメガだったら、番になりたい。」 「橋本ならきっと相手を大切にするから、早くそんな人に出会えたらいいね。」 「うん」 ちょうど話に区切りが着いた時に料理が運ばれてきて、その豪華さに驚く。 スマートフォンを取り出して写真を撮る橋本は、お酒も入ったせいか、興奮しだして、止まらない彼の話を聞きながら食事をした。

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