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第160話

変に酔っ払う事無く食事を終えた。 橋本も俺もほんのりと顔を赤くして、二人で肩を並べて店を出る。 「なあ今度、どっか遊びに行こう。ご飯は行くけど、遊んだことないし。あ、新木も誘って。専務も来たらいいし!」 「変なメンバーだ」 「専務が気を使っちゃうか。新木も緊張しちゃう?……いや、あいつはそんな事ないか。」 「えー、新木さんは緊張しちゃうと思うけど。」 「あいつは結構図太いんだぞ」 夜風に当たっていて気が付いた。 そういえば凪さんに連絡をしていない。 「橋本、待って。凪さんに連絡しなきゃ」 「何で?帰る時電話してって?」 「うん。」 「愛されてるねぇ。お迎えが来る?」 「いや、ただいつ帰るのか気になるだけだと思う。」 道の端で立ち止まり、凪さんに電話をかける。 数コールで出てくれた彼に「凪さぁん」と甘えた声を出してみた。 「また酔ってる?」 「ううん。お酒は飲んだけど、そこまで酔ってないよ。」 「迎えに行くよ。まだ会社なんだ。橋本君も送って行くから、店の近くで待っててくれる?また連絡するよ。」 「わかった!」 電話を切って、橋本と近くのベンチに座る。 「迎えに来るって?」 「うん。橋本も送るから、ここに居てって。」 「やったー。嬉しい」 十五分程、他愛のない会話をしていると、見慣れた車が近くに止まった。 連絡来てないのに、どうしてここってわかったんだろう。 「真樹、橋本君。」 「凪さん、お疲れ様。」 「お疲れ様です、専務。ご飯ご馳走してくれてありがとうございます。すっごい美味しかったです。」 「口に合ったようでよかったよ。家はどこ?住所教えて貰ってもいいかな。」 「もちろんです!送ってくれるなんて嬉しい。俺も凪さんって呼んでいいですか」 「橋本、それはダメ。俺しか凪さんって呼ばないんだよ」 凪さんは苦笑しているけれど、これは大変な問題である。 橋本を後部席に乗せて、俺は助手席に座る。 「橋本は『専務』か、せめて『嘉陽さん』ね。」 「じゃあ嘉陽さん」 「……やっぱり専務にして。」 「独占欲の塊かよ。」 凪さんが運転席に乗り、橋本に住所を聞いたあと、全員がシートベルトをしたのを確認してから車を発進させた。

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