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第170話

「──じゃあ真樹君は……今はご両親とは疎遠なんだね。」 丙さんにそう言われ、少し考えてから返事をする。 「疎遠と言いますか……もう勘当されました。暫く経った事もあるし、何より……凪さんが居てくれたので、もう気にしてません。」 「そう。……それにしても辛かったね。」 「その時は辛かったけど、でもずっと凪さんが励ましてくれました。傍に居てくれたし、だから寂しくはなかったです。寧ろ幸せでした。こんなに思ってくれる人がいるんだって、初めて知った。……凪さん、ありがとう。」 改めてお礼を言いたくなって、凪さんにそう言うと、彼は柔らかく微笑んだ。 「うん。二人が幸せそうでよかった。ね、信英。」 「ああ。」 凪さんが前に言っていた通り、凪さんのご両親は優しくて、オメガの俺を嫌がる事も無かった。 むしろ、凪さんのように優しくて、居心地がいい。 「真樹君。君が良ければずっと凪と一緒にいてあげてほしい。」 「ぁ、え、も、もちろんです!俺の方こそ、ずっと一緒にいてほしいです。」 「ふふっ、よかったなぁ、凪。」 穏やかな空間に包まれる。 二時間ほどすると、ご両親は帰って行った。 緊張が解けて、食器を洗っていると、後ろから凪さんに抱き締められる。 「突然ごめん。驚いただろ」 「うん。でも話せてよかったよ」 「そう?ならよかった。ありがとう」 手をタオルで拭き、振り返る。 抱きしめられているから、すぐそこに凪さんの顔があった。 「ん……」 唇を重ねられ、舌を絡める。 頬を撫でる手が温かくて、唇が離れてから、彼の手に顔を擦り寄せた。 「凪さん、俺はね、凪さんとずっと一緒にいたい。さっきは丙さんが言っていたけど、凪さんの気持ちを聞きたいな。」 「俺も真樹とずっと一緒にいたいよ。」 「嬉しい」 ギュッと凪さんの背中に手を回し、肩に顔を押し付ける。 聞こえてくる心音のおかげで眠たくなって、ふわぁーっと欠伸を零した。

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