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第179話

────一年後。 茹だる様な夏の暑さも落ち着いてきて、漸く秋にさしかかろうとしている。 クーラーの効いたマンショの一室で、俺は洗濯物を畳みながら凪さんの帰りを待っていた。 玄関のドアが開く音がして、洗濯物を放り出し、玄関に向かう。 靴を脱いでいるその姿を確認して、そっと大きな背中に抱きついた。 「おかえりなさい、凪さん。」 「ただいま。」 振り返った凪さんとキスをして、荷物を貰いジャケットを脱がせる。 「真都(まなと)は?」 「寝てるよ。手洗ったらリビングに来てね」 「うん」 凪さんの荷物を片付けて、リビングに行く。 少し待っていると凪さんが洗面所からやって来て、俺の隣に座った。 「真都ぉ、ただいまぁ。」 「凪さん、声大きい。驚いて泣いちゃうよ」 「ごめん」 二ヶ月前、凪さんとの間に子供が生まれた。 男の子で、名前は真都。 凪さんも、凪さんの御両親も喜んでくれて、俺も幸せいっぱいな日々を送っている。 「仕事から帰ってくれば真樹と真都がいるから、疲れが吹っ飛ぶよ。」 「それはよかった」 眠る真都を抱き、プクプクしている頬っぺにキスをした凪さんは、小さな手に自分の指を持っていきギュッと握らせる。 「はぁ、可愛い……。」 真都がうっすらと目を覚まして、ふわふわ欠伸を零した。 「じゃあパパ。今からご飯作るから、真都をよろしくね。」 「はーい」 真都にデレデレな凪さんは、真都を立てた膝に乗せてちいさな手を握り軽く運動をさせている。 そんな二人の姿を見れるのが嬉しい。 キッチンに行き、練習したおかげで少し上達したであろう料理をして、出来上がると盛り付け担当の凪さんと交代する。 ミルクを飲ませて、それが終わると真都はスヤスヤタイムに突入した。 眠っている間に食事を済ませる。 「真都は毎日成長して大きくなってる気がする。」 「そうだね」 「可愛いな。あ、俺がお風呂入れてもいい?」 「うん。ありがとう」 真都と居れる時間が俺より少ないからか、凪さんは少しでも真都の世話をしたいらしい。 凪さんは食事を終えて、皿洗いを済ませた後、すぐにお風呂に行った。少しして真都を連れて行く。 二人がお風呂から上がって、今度は俺がお風呂に入り、あがってきた時には真都はもう眠っていて、凪さんも隣でうつらうつらとしていた。 真都を真ん中にして、大きなベッドに寝転ぶ。 大きな欠伸をした凪さんが、真都を撫でて「おやすみ」と言ってから、俺の手を取る。 「真樹、おやすみ……」 「おやすみなさい」 そして唇を重ねて、眠りに落ちた彼。 二人に布団を掛け直してから、寝顔を見る。 真都はどうやら凪さんに似たらしい。眠っている顔がそっくりだ。 「二人とも、また明日。おやすみ」 そう言って、俺も目を閉じる。 こんな幸せで優しい日常が、これからもどうか続きますように、と願って。 END

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