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第180話 蒼太と洋哉 蒼太side
手を繋ぐことにすら緊張していたのに、今のこの状況に緊張しないはずが無い。
「だから、蒼太君さえよければ、俺とお付き合いしてほしい、です。それから……ゆくゆくは番になれたらって、思ってます。」
僕の自宅で、二人きりのこの状況。
まだ手を繋いでからそんなに時間も経っていない。
「ぼ、僕、と……?え、本当に……?」
「うん。本当。」
それなのにお付き合い……。
嬉しい反面、不安が押し寄せてくる。
「お付き合いして、合わなかったら……」
そしたら一人ぼっちの生活に戻って、また寂しい日々がやって来るのかもしれない。
今の会社に転職できたから、前の生活より随分と気が楽だけれど。
「合わないことは無いと思うよ、俺は。」
「どうして?」
「俺が蒼太君を好きだと思っているし、何より運命の番だし。」
「す、すき……」
「うん。少しの間だけど、一緒に過ごしているうちにそう思った。初めて会った時は運命の番なんて……って思っていたけど、好きな人が運命の番なら、俺はすごく嬉しい。」
手を取られ、包むようにして握られる。
ドキドキしていると顔が近づいて「ダメ?」と聞かれてしまった。
「ダメじゃない……」
「じゃあ、お付き合いしてくれる?」
「はい」
こんな経験初めてで、慣れてなくて恥ずかしい。
チラッと視線をあげると目が合う。
「キスしてもいい?」
「えっ」
「早い?」
「う……早いと思う……」
「ははっ、じゃあ俺達はゆっくり進んでいこうね。」
「うん。……よろしくお願いします。」
「こちらこそ」
そうしてお付き合いをすることが決定した。
ゆくゆくは番になるということも。
「じゃあまずは俺に慣れてほしいな。」
「そんなこと、いわれても……」
「真樹とは仲良いじゃん。俺を真樹だと思ったら話しやすくない?」
「橋本さんは真樹じゃないから無理です」
「その橋本さんっていう呼び方をやめようか。」
むぐっと黙り、何だったらいいんだろうと首を傾げる。名前で呼べばいいだろうか。
「……洋哉、さん?」
「洋哉でいいよ。」
「呼び捨てはハードルが高いです」
「なら、ヒロくんとか?」
「うん。そっちの方が呼びやすい」
試しに「ヒロくん」と呼んでみると、彼は顔を真っ赤にして俯いた。耳までも赤くなっている。可愛い。
「すごい……可愛い。」
「大丈夫?」
「……大丈夫」
その日は少しだけ関係が進展して、ヒロくんは帰っていった。
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