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第181話 蒼太と洋哉

*** 転職して漸く研修を終えたある日、ヒロくんに誘われて夜ご飯を食べに行く事になった。 何度か家で会って発情期になる兆候は無かったから、もう大丈夫だろう判断して。 フロントのソファーに座って待っていると、肩をトンと叩かれて振り返る。 「お疲れ様。」 「ヒロくんもお疲れ様」 「……イイ」 「イイ?」 ぼんやりとしている彼はどうやらお疲れの様子。 もう一度名前を呼ぶと、ハッとしてから「どこ行く?」と聞いてきた。 「あれ、ヒロくんが何か食べたい物あったんじゃないの?」 「え、いや、別に。」 「そうなんだ。えっと……じゃあ……何だろう?」 「好きな食べ物何?俺は焼鳥」 「じゃあ焼鳥を食べに行こうよ。僕も好きだよ」 外食で焼鳥は初めてかもしれない。 焼鳥なら、行くのは居酒屋だろうか。 正直居酒屋も片手で数えられるくらいしか行ったことがない。 「好き?じゃあ、俺のオススメの店でいい?」 「うん。もちろん」 ヒロくんが案内してくれる隣で、初めての外食での焼鳥にワクワクする。 「なんか楽しそうだね。」 「あの、実は外食で焼鳥に行くのが初めてで、すごく楽しみ。」 「え、そうなの?……わ、その笑顔可愛すぎるからちょっとタイム。」 「は?」 「俺本当、可愛いものを見ると堪らなくなるんだよ。」 「……変なの」 そんなに可愛いと言われた記憶もなければ、実際自分の顔を見て可愛いと思ったことがない。 ヒロくんはアルファだからか、オメガの僕が魅力的に見えてしまうんだろうな。 「蒼太君、手を繋いでもいいですか……?」 「え、えっと、外、ですけど……」 「ダメ?」 「う……。いいよ」 その綺麗な顔で聞かれて断れるはずが無い。 もとから断りたいとは思っていなかったけれど、外で手を繋ぐのは男同士だということもあって、少し気が引ける。 差し出された手に手を重ねる。 優しく握られて、胸がキュンっとした。 「あとちょっとで着くよ」 「うん」 多分、顔が赤くなっている。 そんな顔を見られたくなくて、唇を内側に隠して俯いた。

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