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side 怜 「んー。だってさ、金くれるって言われると、ついね。それに、多分、俺すっげー酔ってるときだと思うんだよね、男と寝る時って。そこに至るまでの記憶が殆どないから」 「そんなもの、なのですかねぇ?」  近頃の人間はよくわかりません。お金の為なら何でも出来てしまうんですね? 昔の方は、もっと純粋だったような気がします。そんな感じの方との出会いがなかったのかもしれないですが――。 「でさ、あんた、処女でもないし、女でもない奴の血飲んでも、平気な体質なんだな?」 「別に、血の種類は特に……」  そう答えたのですが、急に思い出してしまいました。昔、祖母に聞いた話を――。 「どしたの?」  しばらく黙り込んでしまった私を見て、その方が心配したように聞いてきました。 「大変なことを思い出しました…。昔、私の親戚が、男性の血を頂いて、大変な事になったと、遠い過去に聞かされたような…」 「ふーん。あっそ」  彼女、いえ、彼はそっけなく返事をして、それで? というような顔をして私を見つめまし た。 「その人だけだったのかも知れないのですが――。でも、親戚一同、ずっと女性の血だけしか頂いて無かったので…。あぁ、どうなんでしょう…もしかしたら私も?」 「へー。まぁ、あんたも、大変な事になるかもね」 「どうしましょう――」 「しらねーよ、俺は」 「……どうしよう……」 「で、その親戚の奴って、どうなったんだよ」  私があまりにも困り果てていたせいでしょう。彼は、仕方ない――という感じで、話の先を促してきました。 「…は、はい。確か、しばらくしたら、急に老化しだしたとか――」 「吸血鬼って、年とんないんじゃないの?」 「だから、頂いてしまったのが男性の血だったからではないか…とお医者様が言ってたそうです」 「ふーん。医者居るんだ?」 「色々な職業の方が居ますよ。一応、皆さん人間のように生活していますが…」  年をとらないのが周りの方々に不審がられないよう、一つの所に一定の期間住んだら、別の場所に引っ越して生活をしているのです。 「へー。で、どうなったんだよ、そいつ」 「お医者様に診て頂いて、少しは良くなったはずですが、詳しい事はあまり…」 「そうなんだ」 「あぁ。どうしましょう? 早く、お医者様に診て頂かないと――」  普段、あまり慌てることない私ですが、この様な事態になってしまって、冷静さを失いつつありました。 「そうだな、大変だよな」  私とは逆に、彼は冷静でした…。自分の事ではないから、当りまえかも知れませんが――。 「……」 「まぁ、とりあえず、医者に電話でもしてみたら?」  吸血鬼に血を吸われても驚かない、美しいけど、マイペースな彼が、呆れたような顔をしながら、私を見つめていました。  この先、私の身体にどんな変化が起きてしまうのでしょうか――。

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