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side さくら  フロを上がって、身体を拭きながら部屋に戻ると、あいつはまだ、スマホを片手に暗い顔をしていた。 「そうですか…わかりました。又、電話します。何か連絡があったら、知らせて下さい。…その時まで、私が生きていたら良いんですけど」  吸血鬼の奴は、死にそうな顔しながらスマホを切った。 「はぁ…」 「で、どうだったのさ?」  振り向いたそいつは、俺を見て、すっげー驚いていた。 「あ、あなた」 「何だよ? ほら、タマあるだろー?」 「い、いえ、そういう事じゃなくて」 「何?」 「いえ、その、素顔でも、お美しいな…と」 「はぁ? バカか、お前、目悪いんじゃないの?」 「あ、まあ、少し」 「んだよ…」  …俺よ、コケてる場合じゃないんじゃない? 「だからさ、医者は何だっての」 「はい…それが、先生は今、ご旅行中で、しばらく戻られないそうで…」  どうもその医者っていう奴は、放浪癖のある奴で、しょっちゅう何処かに旅行に行ってるらしい。 それでよく医者が勤まるな? って言ったら、人間相手の医者では無いし…吸血鬼なんて、滅多に医者にかかるものでもないから…なのだそうだ。で、今は連絡もとれないような所に行ってるという事だった。 「それが、親戚に出た症状と同じような事になる可能性が強いんじゃないかって…」 「ふーん。でも、誰が言ったのさ? その医者は居ないんだろ?」 「はい…あの、先生の奥様が言われたんです。以前、似たようなケースがあったらしくて…」 「はぁ、ま、大変だね。じゃさ、その医者の所に行って待ってればいいじゃん」  俺がそう言うと、そいつは、恨めしそうな顔をして俺を見た。そんな顔されても、困るんだけど? 大体、お前が勝手に俺を女だって思ったんだろ? 「それが…申し上げにくいんですけど…・、血を吸った相手のあなたにも、同じような症状が出る恐れがあるって…」 「へ?」 ど…どーいう事さ?! 「それも、人間の方が早く症状が出るかも知れないと…」 「てめ、ふざけんなよ! どーしてくれんだよ?!」  俺は、そいつの胸倉を掴んだ。 「すみません…でも、あなたが、あんな格好していたから、いけないんです!」  苦しそうな顔をしながら、そいつが俺に文句を言った。ぶん殴ってやろうかと思ったが、至近距離で見たそいつの瞳が、悲しそうに光っている事に気がつき、手を離した。 「…ったく」  とにかく、言い争っていても、仕方が無いかも知れない。 「で、どうすれば良いのかな? 俺は」 「奥様の話では、血を吸った相手の方と、一緒に居た方が良いのでは…? って事でした」 「何でそうなるんだよ?」 「…それが、あなたの方に、症状が現われたら、なるべく早く…」 「何だよ、なるべく早く?」 「いえ…言えません、とにかく…」 「なんか、妖しいんじゃねーの? 症状が出たら、俺を殺して、心臓を食うとかそんなんじゃないのか?」 「そんなんじゃ、ありませんよ…」 「だったら何だよ? あ、そうか、もしかして、吸血鬼なんて話、やっぱ嘘なんだろ? お前、俺のストーカーだったんじゃねーか? 俺の側に居たいからって…」  俺は自分まで症状が出るかも知れないし、症状が出たら早くどうにかしないとヤバイって事を聞かされて、段々イライラしてきた。  俺、何の為に体張って仕事して来たんだよ?  夢をかなえる為にこうしてやって来たのに、今までの努力が無駄になってしまうのか?   俺、死んじまうのか?  そんなの…  そんなの嫌だ!

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