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side 怜
その後も掃除機をかけている途中、何回か失敗しました。
サイドテーブルの上の埃が気になったので、掃除機で吸い取ろうとしたのです。
埃だけを取るつもりだったのに、カチャンカチャン――という金属音と共に、そこに置いてあった、さくちゃんの銀の細いブレスレットと指輪が無くなってしまいました。
当然さくちゃんには、テーブルの上まで掃除機かけるなと怒られました。でも、「ハタキを掛けてから掃除機をかける」なんてこと、最初に教えてくれなかったじゃないですか!
その他の失敗は、さくちゃんには内緒にしました。大体同じような事なんですけど…。
掃除機って便利なはずなのですが、私にとっては、不便な物に思えて仕方ありませんでした。
ですが、そんな私でも、一週間後には、完璧に掃除機を使いこなしていましたよ。
掃除機の他に洗濯機の使い方も習いましたが、これは、掃除をするよりも簡単でした。
ただ、さくちゃんが、しょっちゅうポケットにお金を入れたままにしておくものですから、お札を破れないように注意しながら、洗濯物と一緒に干すことになったこともあります。
洗濯機を初めて使った日は、洗濯機から出した衣類を、クシャクシャのまま干したので、「今度から、形を整えてから干すように」と、さくちゃんに注意されました。
洗濯での失敗はそれくらいだったと思います。
失敗ばかりではありません。洗濯物をたたむのは得意で、お店に並んでいる商品のようにたためていると思います。もともと几帳面なので。
でも、さくちゃんにその事を伝えたら、信じられないという顔をされてしまいましたが――。
それから、料理は、さくちゃんの休みの日に教えてもらう事になりました。今、私が1番やってみたいのが料理です。図書館に行って、基礎の本から、本格的な料理の本まで、色々読んでみましたから。さくちゃんのお休みが、とっても楽しみです。
そうそう、さくちゃんは、私に洋服も貸してくれました。服のサイズは、少し背が低くくて、痩せている私には、ちょっと大きめなのですが、今はそういう風な着こなしも不自然じゃないんだと、さくちゃんが教えてくれました。
さくちゃんの持っている服は、私が今までに着た事の無いような感じの服ばかりですが、意外に似合うような気がします。
それと…、さくちゃんが貸してくれると言ったのですが、ドレスだけはお借りしませんでした。さくちゃんったら、「怜の方が、ドレスが似合うと思うよ」なんて言ってましたが、それは誉められてるのでしょうか…? 喜んで良いのか、悲しんで良いのか、自分では良くわかりませんでした。
さくちゃんと暮らし始めてみると、色々な事が楽しくて、2人で居なくてはいけない理由を、考えることも少なくなってきました。
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