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side さくら  怜との生活だけど…まあ、楽しいといえば楽しい。生活と言っても、正反対な生活リズムだから(吸血鬼が昼間起きてるってのも、可笑しい気もするが)殆ど顔を合わせることが無いのだ。それにしても、あいつのドジッぷりには本当に笑わされる。…って、怜と顔をあわせると不機嫌な顔になってしまうけど。  怜は、失敗すると、まず遠慮がちに俺に声を掛けてくる。それから何がどうした…って説明しながら、俺に何て言われるだろう? って顔してる。その雰囲気、やっぱり犬の怜と同じような感じ。俺の顔色をうかがってる時の、犬の怜とそっくりだ。  年上(それも、かなり年上のはずだろ?)の怜に威張れることが、やけに楽しく思える。  だけど時々、怜が探るように俺のこと見てると、思い出してしまう。 怜に血を吸われた為に起こる身体の変化って、具体的にはどんなものなんだろう? 急に白髪になっちまうとか? シワシワになってくるとか…? 本当に何か変化があるんだろうか? もしかしたら、平気かもしれないじゃないか…。  今はなるべく考えないようにしよう。医者に診てもらえば治るはずだろうし。  今日は怜が失敗をしなかったようだ。だから、出かける前の時間にゆっくり新聞を読むことが出来た。新聞を読んでる間、怜は横から俺のことを、ずっと見ていたようだ。 「何だよ怜? 今日は問題無かったんだろ?」  視線が気になって怜を見ると、思った通り怜は俺の事をガン見していた。 「はい、大丈夫でしたよ」 「じゃ、なんで何か言いたそうに見てんだよ?」 「え…いえ別に…。ただ、さくちゃんって本当にお綺麗だなと思って」  怜が真面目な顔でそう言った。いやらしい話だけど、その言葉は何度も言われている言葉だから、嬉しい言葉でも何でもなかった。見た目なんて、整形でもすればなんとでもなる世の中じゃないか。 「ありがとよ。お前に言われても嬉しくないけどな」  俺がそう答えると、怜が不思議そうな顔をした。 「そうですか? 綺麗だと言うと、皆さんとても喜んでくれるんですけど…」  怜がそう言って少し悲しそうな顔をした。 「だからー、俺は男なの。こんなに塗りたくってるのは、お金の為。誰だって化粧すりゃある程度綺麗になるだろが」  俺がそう言うと、怜が頭を振った。 「そんな事無いと思いますよ。さくちゃんは素顔もお綺麗ですから。それに…ちょっと言葉使いが乱暴ですけど、とっても優しいですしね。私、感謝していますよ」  怜は丁寧にそう言ってから頭を深々と下げた。 「あのなー、誉めても何も出ねーよ。ってか、本当は何か壊したりしたんじゃねーの? 妖しいよなぁ…」  あまりにも怜の視線が真剣すぎて、俺はメチャクチャ照れまくっていた。お前だって、化粧すりゃ、かなりのもんだと思うぞ。  怜に誉められた事が嬉しくて、その日は気分が良いまま店に行く事が出来た。

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