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side 怜  キッチンに1人残った私は、あっという間にハムエッグ、サラダ、スープにパンにコーヒーを用意して、テーブルに並べました。  我ながら鮮やかな手つき…だと思ってしまいました。掃除も洗濯も色々とお小言を言われましたが、これならさくちゃんも文句は言わないでしょう。 「出来上がりましたよ、さくちゃん」  声をかけましたが、返事がありません。 ソファーを覗いてみると、さくちゃんがクッションを抱えて眠っていました。  しばらく、さくちゃんの眠っている顔を見つめていました。最初にさくちゃんを見た時の印象は、とても上品そうで綺麗な人…でした。でも、喋った途端、あまりにも印象と違ってビックリしてしまったものです。と言うよりも、さくちゃんが男性だって事に非常に驚きました。まぁ、さくちゃんが女性でなかったおかげで、この生活が始まってしまったのですが…。  それにしても、こうして、さくちゃんと一緒に生活してみると、彼が黙っている時と、話をしたり、私に文句を言ってる時のギャップが益々感じられます。 ちょっともったいない気がしますが…。まぁ、どちらにしても、さくちゃんは男性なのですけどね。 「さくちゃん、食事ですよ」  私は眠っているさくちゃんに、もう一度、声を掛けました。料理は温かいうちに食べてもらいたいと思います…。 「んー…眠いよ、かあさん」  …完全に寝惚けてます。こんな可愛らしいさくちゃんを見たのは、初めてです。 「あの、さくちゃん?」  肩に手を置き、さくちゃんの身体を揺すって起こします。 「眠いんだってば…」  手の甲で目をこすりながら、さくちゃんが身体を起こしました。 「…あ…なんだ怜か」 「はい。私です」 「…何だよ? 何か失敗したのかよ?」  さくちゃんがちょっと照れたような顔をしてから、また、いつものように私を見て、呆れたような表情をしました。 「違いますよ。食事の用意が出来たんですよ」 「へー、本当に料理出来たんだ?」 「はい。バッチリですよ」

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