29 / 169

29 saku

side さくら  すげー恥かしかったんだけど、1人で寝るのが不安でしょうがなくて、怜に一緒に寝てもらう事にした。 怜が横に来てくれたら、心もほんわかして、すごく安心してしまった。怜って、本当に不思議な存在だって思う。  大学に入った頃から、一人暮らしには慣れていたし、他人に気を使って生活するのなんてごめんだ…なんて思っていた俺だったけど、こうして怜と暮らしてみたら、次第にこんな生活もありなのかも? と思い始めていた。  もしかしたら俺、ずっと寂しかったんじゃないか?…って、怜の体温を背中に感じてやけに素直になった自分がそう考えていた。  こんな風に誰かの体温を感じるのって、暖かくて心地よいかも…。吸血鬼も、俺たちと同じように温かいんだな――そんな風に考えているうちに眠くなり、俺は久しぶりに幸せな気持ちでぐっすりと眠る事が出来た。  翌朝、6時過ぎに目が覚めた。 いつもだと、怜の方が早く起きているのだけど、今日は俺が休みなの知ってるから、ゆっくり寝ているかもしれない。  怜のやつ、昨日は女とやり過ぎて、疲れているだろうから――。  あー! 怜のやつメチャメチャ羨ましい。そんなにすごい女だったのかな?  俺なんて、ここ数ヶ月の間、自分の右手で済ませてしまってるのに…。 疲れてるからって言うのもあるんだけど、相手を気持ちよくさせるより、自分が気持ちよくなりたいんだよって思う。サービス業やってるから、仕事以外でのサービスなんてしたくない…とか思ったりする。  ところで、吸血鬼のセックスってどんな感じなんだろう?  ちょっと気になったりして。って、怜とセックスしたい訳じゃないぞ…断じて無い。  それにしても、こんな奴が吸血鬼ねぇ…? 年齢的には俺よりかなり年上なんだろうけど…意外にあどけない寝顔だよな。 俺は女顔で、化粧すると綺麗とか言われちまうけど、怜だって、なかなかなもんだと思う。物腰も優しいし、水商売系が向いてるような気がする。ホストなんかやったら結構稼げるような気がするんだけど――女にも、血にも困らなそうだし…。  しばらく、怜の寝顔を見つめていた。こんな風にじっくり観察した事、無かったな。ましてや、怜と一緒のベッドにで過ごすようになるとは、思いもよらなかった…いやいや、一緒のベッドったって、あれや、これやするわけじゃないけど。 だけど、怜の体温を感じて、すごく心地良かったんだ――。っていう事は、絶対、怜には言わ無いようにしよう。  30分近く布団の中で怜の寝顔を眺めて過ごしてしまった。  そうだ、いつも怜に飯を作ってもらってる事だし、今日は久しぶりに食事の準備をしよう。 今の仕事は、気力的にも体力的にもとにかく疲れる。だから、洗濯や掃除は必要に迫られてやってるけど、食べるものはコンビニで買えるし、定食屋も近所にあるから、殆ど料理をしていなかった。 だけど、大学に通っている頃は、自炊していたので、料理も出来るのだ。  誰かの為に料理したのは…きっと片手で数えられるくらいの回数かも知れないけど――。

ともだちにシェアしよう!