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side さくら  買い物から帰った後、俺はすごくムシャクシャしていた。怜の顔も見られないくらいに。  自分でも、子供みたいな感情だってわかってる。俺は怜に嫉妬しているんだ。怜が誰とでも楽しそうに話しているのを目の当たりにして、自分には出来なかった事を、サラリとやってのけてる怜に、焼きもち妬いて、拗ねているのだ――。  情けないような気持ちになった。俺が住んでる街なのに…って、感じで気分も悪かった。 そんなこと気にして落ち込むなら、自分も怜のように商店街に行って買い物して、店の人と仲良くなれば良い事なんだ――。 でも、仕事で好きでもない人に話をあわせているから、仕事の店以外で気を使いたくないからそんなの無理だって…。  俺の事を心配して、怜が変に気を使ってくれているけど、それも、子供扱いされてるようで腹が立つ。まぁ…、実年齢でいったら、親子よりもっと離れているんだろうから、子供扱いされても仕方の無い事なんだけど。  怜は根っから良い奴なんだってわかっているつもりだ。素直になれない自分にもイライラしている。俺、マジで子供が焦れてるのと同じじゃないか――。  このまま家に居ても、怜と普通に過ごせる自信がなかった。こんなことなら、出かけてしまえばいいんだ。 そして、どうせ行くなら、すっきりする所が良いよな。そうだよ、しばらくご無沙汰していた、ソープにでも行ってこよう。最近面倒くさくて、もっぱら自分で処理していたから、いい機会かもしれない。  怜に「ベッドを使っていいよ」と伝えてから、もう一度服に着替えた。出かける準備をしている間、怜が探るように見ているのがわかって、嫌だった。早く怜の視界から消え去りたかった。  玄関を出ると、やっと息が出来た感じだ。自分で自分を追い込んでいたような気もするのだけど――。 「さくらちゃん、久しぶりだったじゃない。彼女でも出来たのかな? って思ってたのよ」  俺がいつも指名している、ルリコさんがそう言いながら、俺の体を洗ってくれた。 近頃はマットを使う人が減ってるらしいけど、俺はこのヌルヌルがとても好きなので必ずやってもらうんだ。 「そんなの、居ないよ。でもさ、色々あってね」 「女の子と?」 「いや、そうじゃないけど」 「じゃあ、いい男でも掴まえたとか?」  ルリコさんが、俺の身体の上を滑るように動きながら、そう言った。一瞬、俺の頭の中に怜の事が浮かんだ。俺は、慌てて頭を振った。 「まさか。俺は、女の子が好きだよ。ほら…こんなに柔らかいし、ここんとこなんか、すっごく好き」  そう言って、手を彼女の股の間に滑り込ませ、中指をクッと折り曲げた。 「ん…もう、さくらちゃんったら」  ソープのお姉様は、やっぱり上手い。すっごく気持ち良くしてくれて、ムシャクシャしていたのが、嘘のようにすっきりした。  そして、溜まっていたものを出し切って、冷静になった俺は、拗ねまくっていた自分が、すごく恥かしかった。  マンションに帰ると、音がしないように玄関を開け、居間を通って寝室に向おうとした。すると、ソファーの所で怜が丸くなって眠っていることに気が付いた。  ベッド使って良いって言ったのに――  溜息をついてから寝室に入った。ベッドに潜り込んで寝ようとすると、急に怜の温もりを思い出してしまった。  昨日は、温かくて、気持ちが良かったなぁ…。  怜の奴、きっと俺の態度に腹を立てて、ソファーで寝てしまったんだ。今日は少し寒いはずなのに…。

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