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side 怜
明け方に一度、目を覚ましました。
その朝はさくちゃんの温もりを背中ではなく胸の辺りで感じました。目を開けてみると、さくちゃんが私の胸に顔をうずめるようにして眠っています。
私がさくちゃんの髪をひと撫ですると、さくちゃんは腕を伸ばして私に抱きついてきましたた。
一緒に寝ている時、たまにある事なのです。さくちゃんはきっと人肌が恋しくて、無意識にやってるのでしょう。
私のほうが先に起きてしまうので、本人はそんな事してるなんて、気付いていないはずです。
それにしても…。
昨晩は2人一緒にいる時間が長かったので、さくちゃんのことがいつもよりもっと身近に思えてしまいます。
さくちゃんがぐっすり眠っているのを確認してから、私はさくちゃんの体をそっと抱きしめてみました。
甘いシャンプーの香りが漂ってきます。昨晩の華のようなさくらちゃんを思い出し、今抱きしめているさくちゃんが、本当に女性だったら良いのに…と思っていました。
「…さくらちゃん」
お店でさくちゃんが使っている名前を呼びながら、もう一度さくちゃんの体をギュッと抱きしめ額にキスをすると、さくちゃんは「ん~」と鼻に掛かった、甘い声をだしました。
私は、とても幸せな気持ちになり、もう一度眠りにつきました。
夢の中で、私はずっと昔に暮らしていた、白いお城のような建物の廊下にたたずんでいました。両側に扉がたくさん並んでいる長い廊下をどんどん歩いていくと、どこからか楽し気な音楽が聴こえてきました。
私はその音楽に導かれるようにその部屋に向かって歩いていきました。なぜかその部屋には誰かが居るはずだと思っているのです。
音楽の聞こえてくる部屋の扉を開くと、そこは大広間で、舞踏会が開かれていました。
私はその時、舞踏会にある女性を招待した事を思い出し、その女性を探し始めました。
広間の中を探しまわりましたが、いくら探してもその女性は見つかりませんでした。女性が来てくれなかったんだと思った私は悲しくなり、その部屋から出ました。
そして、ボンヤリと庭の木々を眺めていると、庭の奥の方から鳥のさえずりが聞こえてきました。私はその声に誘われるように庭に出ていきました。
噴水の近くまで行くと、そこに1人の女性かいる事に気が付きました。
あの人かも知れない。そう思った私は、噴水の所まで急ごうと思いました。
でも、走ろうとしても思うように足が動かず、じれったいような気持になりました。
「こちらにいらしたんですね?」
やっとのことで女性のそばまで行った私は、そう声をかけました。
女性はニッコリと微笑み「えぇ、あなたが来て下さるのを待っていました」と答えました。
「嬉しいです、さくらちゃん」
私は女性を抱きしめ、その唇にキスをしました。
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