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side さくら  怜にベッドで抱きしめられた日から、俺は怜を意識してしまうようになった。 そのせいで、怜といる時も、あまり近くに寄らないように気をつけたり、目を見ないようにしたり、触れないようにしたり、そんな努力をするようになっしまった。  平日は一緒に居る時間が少ないから、まだ良いけど…。  怜が店の来た日の翌々日は、仕事が休みだったから、いつものように怜と買い物に行った。  ホントは、何か理由をつけて、一緒に行くのをやめようかと思ったけど、怜は何も無かったような顔してるのに、俺ばかりが気にしてるのが悔しくて、普通の顔をしてついて行った。  いつもの自分でいたつもりだった、と言うかいつも通りでいようと心掛けた。 でも、どこの店に行っても、怜と店員の会話に上手く絡めなくて、ますます滅入ってしまった。怜の奥さんって事になってる、あの例の八百屋に行った時なんかは特に酷かった。 「さくらちゃん、体調でも悪いのかい? 今日はやけに大人しいねぇ」  じいさんに聞かれて、メチャメチャ焦った。 「え、別に、どこも悪くないですよ」  俺は一生懸命笑顔を作ってじいさんに答えた。 すると、じいさんは「それならいいんだけど」と安心したような顔をして、店の奥に戻っていった。  じいさんがそばから居なくなると、怜が急に俺の手をすっと握った。 「大丈夫? さくらちゃん」  怜の目がしっかり、俺の目を見つめていた。俺は頬が熱くなるのを感じた。 「ちょ、やめろって…」  咄嗟に、不機嫌丸出しの地声が出てしまった。すると、他の客の対応が終わったばあさんが、驚いたように振り返った。 「あら? どうしたの?」  ばあさんが目を真丸にして怜の方をみていた。俺の声だと思わなかったんだろう。 「何でもありません。ちょっと、さくらちゃんがくすぐってきたので…」  怜がそう言って笑った。  俺はばあさんを見ながら、怜の腕を軽く叩いて、 「いやだ…怜ったら、くすぐってないわよ」と言い訳した。  あぁ、もう。何やってんだよ…。ドキドキして仕方がない。俺、どうなっちまったんだ。  その後は、必死にいつもの自分でいようと努力した。 怜も、その時以外、俺に触れたりしなかったから、なんとか無事に家に帰れたけど…。 バカみたいだ、俺ばっかり慌てまくって…。    そして…  休みあけに店に行くと、雨宮遙が俺の男だって話になっていた。 違うと言ったとしても、通用しないと思ったので、特に否定も肯定もしないでおいた。  ママが怜の事をえらく気に入ったようで、又連れて来いとか、一緒に出かけてもいいかとか事あるごとに話しかけてきた。 ハッキリ言って、怜の事を聞かれるのがすごく嫌だった。  なんで嫌だと思ってしまうのだろう?  子供じみた独占欲…?   怜が人気者になってしまう事に対しての嫉妬心?  ――俺は怜の事どう思ってるんだろ?  怜に対する感情がどういうものか自分でもよくわからなかったけど、とにかく、怜にはもう店に来てほしくなかった。

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