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side さくら  そして、怜が店に来てから、ちょうど一週間が過ぎた。その日は、入店以来の馴染みの客の相手をしていた。  そいつは、どこかの会社の社長の息子で、今ではそいつ自身も役員クラスの待遇を受けているそうだ。店に来ると、必ずその事を自慢するのだ。  年上のやつらが、自分にペコペコ頭を下げてくるのが、楽しくて仕方ないらしい。もしかしたら、本当に能力のある奴なのかも知れないが、俺はそういう事を自慢して歩く人間が大嫌いだ。 子供の頃から、甘やかされて育てられたって事が、言葉の端々から感じ取られるし、誰に対しても横柄だし…。その態度が気に入らなくて、俺にとっては、嫌な客の一人だった。  俺を指名するの客の中では、かなり若い方に入るんだけど、こいつに指名されるよりは、他のオヤジ達のくだらないギャグに付き合ったほうがまだましだと思っている。  だけど…客を選り好み出来る立場では無いんだ。上得意様には、どんどん金を落としていってもらわなくては――。 「さくらちゃんは、いつ見ても綺麗だね。どうして女の子じゃなかったんだろう?」  そいつ、雪谷利一(ゆきがやとしかず)が、俺の肩に手を回しながら言った。 何度も言われてる言葉だけど、そんなの俺に言われても困るんだよな…。 「えーそんなこと言ったって、仕方ないでしょー。だって、生まれた時からタマ付いてるんだもん」  俺がそう答えると、利一が残念そうにため息をついた。 「ま、そうだよな。仕方ないよな…」  利一がそう言いながら俺のスカートの上から、股間のあたりを指で軽く弾いた。 「やだ、もう、リイチったら」 「女の子になる気はないのかよ」  利一がそう聞いた。何度も聞かれているけれど、俺は別に女になりたいわけじゃないんだ。 「ないない。あ、でもさ、もし私が女の子になったら、お嫁さんにしてくれるの? 利一のお嫁さんになったら、何でも買ってもらえるわよねー。玉の輿、良いかも」  自分で言ってて、反吐が出そうだった。女だったとしても、女になったとしても、お前のヨメになんて絶対ならないっての! 「うーん、そうだなぁ、結婚は無理かな。結婚相手は親父が探してくるらしいんだよなー。『次期社長にふさわしい相手を選ばないといけない』とか言ってさ。さくらちゃんは愛人にならしてやるよ。マンションだって、何だって、好きなもん買ってやるよ」  利一が俺の腰に手を回してから、偉そうな態度でそう言った。  はぁ? って感じだぜ。 「そっか、愛人なんだ? でも、その方が良いわ。堅苦しい事きらいだもん私。愛人の方が好き勝手に遊べそうだものねー。色んなもの買ってもらっちゃおーっと」  俺はそう言ってから、体制を変えるふりをして、横を向き舌を出した。  ほざいてろボケ。  ムカついてしょうがないから、めいっぱい酒飲んでやるぞ! 「なぁ、さくらちゃん? 水割り作ってくれよ」  利一が甘えるように俺にそう言った。 「あ、ごめんなさい、リイチ。今すぐ作るからね」

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